婚約話 6


 ルルーシュはぐったりといすにもたれた。


 ユーフェミアは好きか嫌いかと言えば、数少ない好きに分類される兄弟、妹であるが、ルルーシュにとっては多少元気がよすぎる。
 なんだか生気を全部吸い取られてしまったような気分になっている。

 だがまあ話すのも嫌いではない。
 彼女が頻繁に訪れることに関してはお互いのためにもいい顔はできないので、ルルーシュの立場としてはとがめるよりほかないのだが、うれしく思うのも事実である。
 表情豊かなユーフェミアは、見ているだけで楽しい気分になるし、何気ない会話の中からは意外にルルーシュの求める情報が手にはいったりする。
 ユーフェミアが特に意識していない事柄でも、情報の制限されているルルーシュからしてみれば貴重な情報であったりもする。皇族であるユーフェミアのもたらしてくれる情報は何にも代えがたい。
 
 が。


 やはり若さとパワーが違う――と一つしか違わないくせにルルーシュはひとりごちた。
 しかし去年のルルーシュがそうだったかと言えばそうでもないので、結局若さというよりは個人差だろう。

 ああ、このまま眠ってしまいたいと思う。
 実際何もなければこのまま落ちてしまっているはずだ。
 ちらりと顔をあげて溜息をついた。




「スザク」



 何を思ったか、スザクだけが部屋から出て行かず、居残っているのだ。
 おかげで眠ることもできやしない。


「どうかしたのか?」



 ほうっておくこともできず、今は決して彼と話したい気分ではなかったのだが、ルルーシュはしぶしぶ口を開いた。


 「いつまで居座るつもりだ」

 さっさとでていけ――この言葉をこの一週間で何度使っただろう――と心で念じながら睨みつけたが、スザクは気にする様子もなくルルーシュを見つめてくる。


「聞きだいことがあるんだ」
「…………昨日のことか?」


 何がそんなに気になったかは知らないが、昨日やけに不満そうにしていたからすぐに検討はついた。
 だが深く突っ込まれたい内容ではない。
 だからこそ昨日から何かを言いかけてはやめるスザクを全て見なかったことにしてきたというのに。
 C.C.にあんなことを言われた今となっては尚更だ。


 嫉妬。
 ルルーシュがユーフェミアに。
 逆上。
 自分のものが傷つけられたから。


 自分の感情とは到底思えない。
 そもそもスザクはルルーシュのものではないというのに、そんな場違いなことを思っているというのか。
 この自分が。


 C.C.の勘違い――いや、確かに昨日からの苛立ちの原因の一つになっている、己の理解できない行動に説明はつく。最も不本意な形でついてしまう。


 けれど。
 駄目だ。
 認めたら壊れてしまう。



 何か、大きなものが。
 それはとても恐ろしいことだ。


「そうだ」


 スザクの声はいつもより固い。
 何を聞かれるのだろうと思って心臓がとくんと鳴った。
 今はとても疲れていて、全てをかわしきる自信がなかった。


「何が聞きだいんだ」


 それでも逃げ道が見あたらなければ向き合うしかない。



「色々あるけどまず一つめ。昨日みたいなことはよくあるのか」
「最近はとんとご無沙汰だったんだがな。ないとは言わない」
「君がそれについて何らかの手を打ったことは?」
「お前に言う必要はない」



 ルルーシュは当然の権利を行使しただけだが、脅迫だとかえげつない手を多用してきた身としては、けして知られたいものではない。
 だからスザクにその意図が伝わらなかったことは正解で安堵すべきなのだ。
 なのにスザクの顔が盛大にしかめられたとたんに泣きたくなった――女々しい自分に更に泣きたくなるスパイラル。



「スザ」
「君が、拒否反応がでるくらい人を嫌っていることも、その原因がなんなのかも、何となくだけど、わかる気がする」


 スザクの言葉にいつものルルーシュだったならすかさず痛烈な皮肉を交えた否定をぶつけていたはじだ。
 だが今ルルーシュはそれどころではなかった。
 スザクの言葉など悪いが聞いちゃいない。

 今、自分が何を言おうとしたかに気をとられてしまっていた。


 今、ルルーシュは、言い繕うとしなかったか。
 スザク――その後に何を言うつもりだった。


 何を恐れた。



「僕なんかにわかってたまるかってルルーシュは思うだろうからそれは別にいい。だけど………ごめん、すごく矛盾しているんだけど」


 君が好きだよ。
 危険にさらしたいわけじゃない。
 ルルーシュが傷つくのは絶対に嫌だ。
 笑ってほしい。
 でも、今のままでは本当の意味で笑うことなんかできるわけがない。
 本当に好きなんだ。





 言い訳は好きではじまって好きで終わった。



 でも。



「能力はあるくせに、何もしないルルーシュに、腹が立つ」



 静かな声だというのに、悲鳴のように錯覚した。


 自分で言っているようにそれはとことん矛盾していた。危ないことをしないでといいながら、戦えという。
 けれど、言いたいことはわかったつもりだ。

 馬鹿なことで悩む奴だと思う。
 馬鹿、だ。
 人のことなど放っておけばいいのに。
 結局は、心配されているのだと気付いた。



「具体的には何をしろと言っているんだ。策もなく手をだして無事でいられるほど甘い世界じゃないぞ」




 そうだ。
 触らなくても手を伸ばしただけでも蹴落とされる。
 常に争い、終点はない。
 引きずり落とすか、落とされるか、落ちなくてもしがみつけるか、あがれるか、その場に留まっているやつに価値はない。
 そのレースに参加するということは――。


 うまく立場が確立できればルルーシュはともかくナナリーを今とは比べものにならないほど安全な場所におけるかもしれない。
 しかし、かも。


 その過程で潰されてしまう可能性は…………、いや、守りきれる自信はある。
 策はある。


 けれど、足りないのだ



「僕にはわからない。頭を使うのは得意じゃないんだ」



 駒が一つ、足りない。



「無責任なやつだ」
「うん、ごめん。言いたかっただけなんだ。話はこれだけだよ」


 くるりと、今度は促されてもいないのにスザクは背を向けた。
 最低に勝手な男だ。


 最低だ。
 本当に最低だ。


 たった一言で揺れ動く自分が一番最低だ。



「スザク」


 呼び止めてしまったことに自分で驚いた。
 こんなことをする予定はなかったというのに。
 だが、足を止めさせてしまったからには何か、言わねばならない。



「お前は、………何だ」


 ああ、何を言っているのだろう。



「お前は私の何だ」
「婚約者だよ。君が歓迎してなかろうが、僕のことが嫌いだろうが、運命共同体だ」



 ルルーシュがスザクを危険に晒していると責めているのだろうかと考えて、さすがにスザクを侮辱しすぎだと振り払った。
 スザクはルルーシュの態度が気に食わないと言っただけだ。


 だが、ルルーシュの危険がスザクの危険でもあることは事実でしかない。
 スザクにはルルーシュを責める資格がある。
 手放してやれないのなら尚更だ。
 手放してやれればいいのに、先日自分で言ったように、それはそう簡単なことではない。
 もっと安全で安定な、そう、ユーフェミアのところにでも……。
 行かせてやれればよかったが、行かせてやれないのならばルルーシュは他の面でスザクに報いらねばならない。


 守ってもらった。
 母が死んでから、人を用いて危険を排除することはあっても、庇われて守られたのは初めてだ。
 だから、絆されたのだろうか――それとももっと前からだろうか。ルルーシュは、スザクの好意に救われてはいなかっただろうか。自分のものだと思い上がるほどに。


 報いなければならない。


 だけど。
 足りない。
 駒が一つ、絶対的に足りない。



「もし、私が、この境遇から抜け出そうと足掻くとする」


 もう部屋をでようとしていたスザクがピタリと止まり、驚愕をあらわに振り返った。
 でていくのなら、言うだけ言って出ていくのならそれでもかまわなかった。
 呟くような声がスザクの耳に届く確証もなかったから。

 だが足がとまったからルルーシュも立ち上がった。

 スザクの前に立てば目線はスザクのほうが若干上だがそう変わらない。きっとスザクはこれ
からもっと伸びるのだろう。
 少しでも身動きすれば触れあってしまう位置まで、自分から近づいたのははじめてだ。
 拒否反応はなかった――素直なものだ。それ以上になんて簡単な女なのだろう。
 一週間もたたずに絆された。



「その途端に今まで様子見していた兄弟たちが潰しにくるだろう。どこから? 後ろからだ」


 恥も卑怯もそもそも存在しない。
 勝ってしまえば問題はない。


「ナナリーは、咲世子さんとミレイに任せていれば大丈夫だろう。咲世子さんはあれでいてSPとしてもかなり優秀な人だし、アッシュフォード家は落ちぶれたといっても、いざという時にナナリーを隠すことぐらいはできる。C.C.は問題外だ。あれはあれで好きにやるだろうからな」


 足りない。
 絶対的に一つ。


 だけど報いらねばならない。



 大丈夫だ。
 諦めることはできる。
 駒が揃うのを悠長に待っていては、いつになるかわからない。
 それに、永遠に揃わないかもしれないし、ここら辺がきっと妥協のし時なのだったのだろう。


 初めて自分から手を伸ばした。


「だからスザク、お前は自分の身は自分で守れよ」


 迷って――髪に触りたいなとも思ったのだけれど、一瞬頬に伸ばされた手は。
 結局肩を小突いた。







 ルルーシュ自身のことは、仕方がないから諦めよう。



























 動かなかったのではない。
 動けなかった。


 はじめてのルルーシュからの接触――殴る蹴る以外で。


 喜びよりも驚きのほうが大きくて、動けなかった。
 肩をほんの少し小突かれただけだ。


 何がおこったのだろう。
 あのルルーシュが……。
 だがじわじわとこみ上げてくる悦びを噛みしめているような暇はない。
 はっと気付いた時、ルルーシュはすでにスザクの横を通り抜け、三歩ほど先にいた。


 駄目だ。
 ルルーシュの言った意味がわからないまま行かせてはならない。
 スザク慌ててルルーシュの腕を掴む。


「待って!ルルーシュ!」


 やばいと思ったのは掴んでしまってから。
 また拳が飛んでくる。
 身を竦ませるほどの威力はないが、ルルーシュの反応を思ってスザクは身構えたがしかし、スザクの予想は外れ、拳も回し蹴りも罵声さえも襲ってはこなかった。

 煩わしそうに振り向いたルルーシュは、掴まれた手を見下ろしただけだった。



「手、痛いんだが」


 逃げられないようにと気持ちを入れすぎたせいか強く握りすぎだと言われて、若干力を抜いた。


「あ。ごめん」


 だが放しはしない。



「ルルーシュ?」
「なんだ」


 よかった。
 まだ話に応じてくれる気はあるようだ。
 これはあれだろうか。
 昨日、スザクがルルーシュを庇って怪我をしたから罪悪感でも感じて譲歩してくれているのだろうか――だとしたら一石二鳥でかなりお得なことをしたわけだ。
 ルルーシュも守れて、ルルーシュから譲歩を引き出すなんて。



「それってどういう」



 言いかけて気付いたのだが、ルルーシュの拒絶反応は無意識の条件反射ではなかったろうか。
 ルルーシュから触れるのがその範疇に入らないというのは納得ができる。
 だが、今スザクがルルーシュを掴んだとき………は。


「スザク?」





 言いかけていきなり黙ってしまったスザクにルルーシュが先を促す。

 そうだった。
 先に解決すべきなのはこっちのほうだ。
 もともと男の脳は二つのことを同時にするのに向いていないのだ。こっちはあとでゆっくり考えるとしよう。


 気を取り直して、せっかくなので言葉も選び直した。



「ルルーシュ、君は一体何をするつもり?」



 軽く腕を引っ張ったら、それだけでバランスを崩した。
 おもしろくなさそうに睨まれる。



「お前が言ったんだろう?俺がしているのは危険を長引かせてるだけだと」
「え?」
「ああ、それともあれか?報復は自分でやりたいか?今なら方法くらい決めさせてやるぞ?被害者はお前だからな」



 どうしたい。


 今まで見た中で一番あくどくて、でも楽しそうで綺麗な笑顔だった。



「ただ殺すだけじゃ生ぬるいか?何がいい?」



 殺すにしても射殺刺殺焼死に圧死、水没に転落。
 色々あるぞというが、そんな話だっただろうか。

 殺すよりも屈辱を与える方法もある。


 いきなり一段階飛ばしてはいないだろうか。



「犯人がわかってるの?」
「第8皇子だ」



 まあ誰であってもおかしくはない。
 平気でそんなことを言えることが全てを物語る。



「いいか。今回はもともと動く予定だった。あれには一度警告してるんだ。三度目を与えてやる気はない。一晩やる。リクエストがあるなら考えておけ」


 違う。
 そこでない。



「どうして、今回だけ」
「二回目だからだ」



 そっけなくルルーシュは言った。
 スザクが勘違いしないように、とでも言いたげに。

 そうやって簡潔に答えると、頭の整理がついていないスザクをしばらく眺めていたルルーシュは整理がつく前にじゃあもういいなと言ってスザクの手を振り払うと背を向けて歩き始めた。


 よくない。
 まだよくない。



 まだうまく事情が呑み込めていなかったのだけれど、ルルーシュの言うことはつまり、戦うと、そういうことを意味しといると考えて間違いないのだろうか。
 スザクが迫った通りに。

 しかも話の流れからして、どうやらもともとそのつもりだったということでいいのだろうか。

 それはつまり、スザクが苛立つ理由はどこにもなかったことになる――実際は己の行動が現在ではなくその後の行動を決めたのだとはこの時のスザクには知りようがなかった。
 そうか、と納得とも安堵ともつかない気持ちが広がっていく。


 やはりルルーシュはスザクが思っていた通りのルルーシュだ。


 ルルーシュの何を知ってると問いつめられてしまえば困るけれど、それでこそ、スザクが欲しいルルーシュだ。
 勝手に幻想を押しつけている自覚はある。
 だけどその理想と現実が図らずも一致したとなれば、スザクの取るべき行動は一つしかないではないか。



「ルルーシュ」



 読んだがルルーシュは足を止めない。
 だからスザクが追いかける。

 身長はそう変わらないのに、スザクよりも随分と小さな背中を――けれどスザクなんかよりもずっとずっと重たいものを背負っている。
 一見とてもではないが頼りになるとは思えない。


 華奢で小さくて無防備で。
 そして愛おしい。



 追いかけて、衝動に負けた。

 本当はそんなことをするつもりは全くなかったのだけれど、その背中を前にしてこみ上げてくる悦びは到底抑えきれるものではなかった。


 それでも極力驚かせないようにそっと腕を回した。


「うわっ」



 いきなりの進行方向反対の抵抗にルルーシュがバランスを崩して後ろに、スザクの胸の中に落ちてきた。
 頭を肩のところで受け止める。



「スザク!」



 咎めるのは言葉だけ。
 今度もまた、拒絶反応はなかった。

 これは、ようやく受け入れてもらえたとそういうことだろうか――違うかもしれない。そこまでではなく、ただの慣れかもしれない。でも誤解したくなる。
 ああもう、勝手に解釈してしまっていいだろうか。
 少なくともスザクとルルーシュの関係が一歩進んだことだけは確かなのだろうか。



「ルルーシュ、背中ががら空きだよ」


 君のことは誰が護るの。


 そんなことを言い出すくらいスザクは少し舞い上がりすぎていた。
 先程のルルーシュの計画の中にルルーシュ自身のことが一切なかったことに疑問と不満を覚えていたのは事実だけれども、少しばかりスザクへの態度な軟化したからといってルルーシュがスザクにすがりついてくるわけではないのに――こんな聞き方をしたのは、意識よりほんの下の部分でルルーシュから他でもないスザクに護ってという言葉をひきだしたかったからに他ならない。
 大した思い上がりだ。
 護りたいのなら護らせてと懇願して初めて許しをくれるようなひとなのに。ルルーシュはおそらくまだスザクを信用まではしていないというのに――疑うのを少しやめても、信じて用いるまでは。


 ルルーシュは顔をあげてスザクを見た。
 そこには何の感情もなく、さっと冷水を浴びせられたようにスザクの頭が冷える。


「自分の身ぐらい自分で護るさ」


 ――間違えたっ。 

 弱いくせに、自分でもそれをわかっているからだろう、その言葉こそ、諦めと自嘲の入り混じった空々しいものだった。

 はなせと言われて腕の力を強める。



「ごめん。ごめん、言い方を間違えた」




 一度間違えてしまったから、許しは期待しない。
 黙認でいい。
 ……たとえそれすらなくても、勝手にするだけだ。




「君は僕が護るから」




























 ノックもなしに入ってきた人間に第二皇子シュナイゼル・エル・ブリタニアは顔をあげた。


 今は秘書も丁度席を外しているので実質的に二人きりということになるが、巨大な帝国の皇帝に最も近い男とされている彼には常に暗殺の危険がつきまとっているというのにシュナイゼルは特に警戒もせずに苦笑した。
 彼女――訪問者は女だった――の訪れはいつだって突然で、そして常に都合よく誰もいないのだから頭が下がる。

 それにしても彼女の訪れは随分と久しぶりだ。



 女は帝国宰相を目の前にしてもなんら臆することもなく堂々とソファに座った。



「久しぶりだね」


 気さくな声をかけるも返されたのは不機嫌な一瞥のみだ。
 それはいつもの――というほど頻繁に訪れているわけではないが、見慣れたものなので大して気にせず彼もソファの方へ移動した。



「おい。ここは茶もでてこないのか」

 今日も彼女は絶好調だ。
 尊大な態度がこれほど自然な女も他にいないだろう。
 普通皇族にたいしてこんなにも偉そうな態度は許されないはずだが、彼女に関しては例外中の例外といったところか。
 そもそも人間の決まりをあてはめていいものか。自分が子供だった時分にはすでに『お姉さん』だったはずの彼女は今でもまだお嬢さんだ。
 実年齢を聞いたところ……、視線で人が殺せそうだと思った。詳しくは語らない。



「私の煎れたものに口をつけてくれるのかい?ならば気合いをいれて煎れよう」
「私が飲もうが飲むまいが出すのが礼儀じゃないのか」


 礼儀を重んじる人間とは知らなかった。


「それは悪かったね。お詫びにリクエストがあるなら受け付けよう」
「玉露」



 嫌がらせだろう――用件を考えても嫌がらせなんだろう。

 もちろんこんなことで動じるようでは彼女と付き合おうなどては思わない。
 すがすがしい笑顔で――見る者によってはたいへん胡散臭い――頷くとお望み通りの品を用意してやった。
 実際に飲むかは関係ないが、もちろん最高級のものだ。


 それに彼女は珍しくも口をつけた。


「及第点ギリギリだな」


 まあまあ以下だそうだ――手厳しい。

 シュナイゼルも手ずから淹れた日本茶をのみながら本題を待つ。
 こういうところからも彼女との付き合いがそれなりにあることが伺える――下手に話題を切り出してしまったら余計なほうへと流されてしまうのだ。
 結局たまに流れを微調整しながらさせたいようにさせてやるのが一番効率がいい。
 今回については話題に予想がついていたが。


「おめでとう、と言っておこうか」
「ではありがとうと言わせてもらおうか」

 ようやく始まった話に湯呑みを下ろした。


「と、言いたいところなんだが残念ながら全てが私の希望通りに進んだわけではないよ」


 一応言い訳をしてみたが、それが何だと鼻で笑われた。


「何故あれを選んだ」



 あれ――枢木スザク。
 ルルーシュにあてがった婚約者。



「候補の中で一番腕が立ったからだよ。ある程度能力があればルルーシュは使うだろうと思ったからね。まさかあのルルーシュが絆されるとは予想外だったよ。もっと年上にしてみればよかったかな」
「小賢しい奴だ」




 それだけが計算外だった。
 まさかルルーシュがあんな男を受け入れるとは――ルルーシュも所詮は女だったということか。



「あの子はあんな男にはもったいないよ」


 本心だ。
 ルルーシュを表舞台に向かわせたことは嬉しい誤算だったが、そこまでしろとは誰も言っていない。
 ただ大人しく番犬となっていればいいものを。



「だがまあこれで君ももう子守からは解放されることになるね」
「私が欲しいか?」



 彼女は魅力的だ。
 頭の回転は早く、容姿も悪くない。
 華奢な少女の外見で腕は立ち、度胸は最上級。
 知識も膨大、仕事は確実。
 そして何より変わった人間は大好きだ。
 シュナイゼルの横に立つに値する。




「喉から手がでるほどに」
「そうか」



 女がくつりと気分よさそうにく笑った。


「だが、断る」


「何故だい?ルルーシュはもう君の手を離れてもいいころだろう。君がいつまでも縛られている必要は」
「私がルルーシュに未練があるといったら?」
「私は君が望むのならかなりの融通をきかせる心持ちでいるのだがね」


 彼女――C.C.が立ち上がった。



「ルルーシュのあれがないともう人生が楽しくないんだ」
「ピザかい?」
「ああそれも絶品だが。あいつの悲鳴にまさるスパイスはない」



 お前のおかげで夜にはりこんでいればもっと楽しいものが聞けそうだ。
 今日はそのお礼にきたんだ。










 悪趣味な、魔女め。








 手には入らないからこそ魅力的なのだろうか。







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【言い訳】(反転)
えー。ここまでお付き合いくださり本当にありがとうございます。
テストをまたいで二か月も連載してましたね。たったこれだけの内容のものをorzorzorzorz
気長にお付き合いくださったかたがたに本当に頭があがりません。
おわびとかおわびとかおわびとかおわびとかあとおわびとかそれから個人的な趣味のためにおまけを3つほど書きました。内容は連載前にブログに書きました、
1.スザクの恋人を別れさせるため日本に行くルルーシュ(君に何の権利があるっていうの)
2.スザク婿入り話。男嫌いルルーシュ(私に触るなと言っているっ!)
3.現代パロ強制同居話(「部屋に入ってくるなよ変態」「安心して。興味ない」)
4.女装スザ子と男装ルルーシュ(完全ギャグ:同性と結婚なんかできるかっ)
の中の書かなかった1,3,4の一部を抜粋したものです。雰囲気ぐらいしかわからないような短編ですが、楽しんでいただければ幸いです。1がかなり難産だったのでおすすめは2です。かなり厨な内容ですがっ!





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