3.現代パロ強制同居話
どのシーンを書くかで相当悩んだんですが(初顔合わせとか、学校でのシーンとか)
せっかくなので同居中。しか相当…………ご都合主義orz
ぱさっと落ちた。
ええっと、なんだろう。
ああそうだ。
…………………………………タオルだ。
タオル。
バスタオル。
床に、落ちた。
それはつまり。
…………………………つまり?
そう、つまり丸見えということで。
何がって………………、全部。
ルルーシュは悲鳴もなく手にしていたものを投げた。
スザクがなんなく受け取った。
「小さいな」
ぼそっと呟かれて、血管の切れる音がした。
わかる。
何を、なんて言われなくても普段から何度も繰り返されていればいやでもわかる。
ルルーシュだってさすがに自覚はあるけれど、だから言われても平気だというわけではない。むしろ自覚があって気にしているからこそスザクにだけは言われたくなかった。
「でていけ変態!」
「変態? 俺が? 変態はルルーシュのほうだろ。俺はおまえがこんなところにいるって知らなかったんだよ。だいたいあけたのは俺でも、タオル落としたのはお前が勝手にやったことだろ。触ってないどころか見せてくれなんて頼んでもない」
ルルーシュは真っ赤になってバスタオルを引き上げた。
それを見てスザクが心底馬鹿にした様子ではんと笑った。
「なのに何? ルルーシュは俺に見てもらいたかったわけ?」
「ふ、ふざけっ」
「でも悪いな。おまえみたいな凹凸のない身体には正直食指が全く動かないんだ」
嫌いだ。
大っ嫌いだ。
枢木スザクなんて大嫌いだ。
好きになれる要素がこれっぽっちも見当たらない。
そんなルルーシュにとってスザクの言葉はある意味都合のいい言葉と言えないこともなかったが、だからといって侮辱を受け入れるということにはならない。
「まあいいや。とにかく俺も早くシャワー浴びたいんだ。さっさと着替えてくれ」
ルルーシュが投げつけたものを洗濯機の上にほいと置くとスザクは肩をすくめて出て行った。
その様子が本当に、全く、一ミリも、興味がありませんといわれているようで――というか言われているのだが――ルルーシュは深く傷ついた。
あんな最低な男の言葉に左右される自分自身にばからしいことだと言い聞かせてはみるけれど、そっと自分の身体を見下ろして溜息をつく。
もうちょっと肉付きのいい身体だったら、あるいは、馬鹿にされなかったのだろうか。
女として見てほしいだとか、男として反応しろだとか、そんなことは一切思わない。
されても迷惑以外の何物でもない。
だが一人の人間としてせめてもう少しは尊重されてもいいのではないだろうか。
それともあの筋肉ばかにそんなことを期待しても無駄なのだろうか――その割に彼がもてるのはどうしてなんだろうと考えてうんざりした。
あの外面の良さは、というかあれはもはや二重人格だが、確かに表彰ものだ。同じクラスのルルーシュだってこんなことになる前、ただのクラスメイトだった時代は、枢木スザクをお人好しだと評価していたではないか。いつだってほやんとした笑顔を浮かべて人当たりはいいし、頼まれごとを断っているところを見たことがない。
基本的に女の子には親切で彼氏候補としても友達としても評判は高いし、勉強のほうはそこまでではないけれど別段追試に引っかかったり問題になるほどではない。
それよりも突出した運動能力だろう。当初問題になるほど勧誘が来てしまったせいで決まった部活に入っていない彼は、試合の時だけあらゆる部活に補充メンバーとして参加しているらしい。
なんてふざけた奴だ。
ルルーシュからしてみれば勝ち負けだけが価値ではないだろう。正規のメンバーを一人減らして、試合にでれない人間をつくってまでスザクを入れる必要があるのかと問いただしたくて仕方がない。まあ、確かに、勝率は格段に上がっているみたいだが。
いや、話がそれた。
そんなこんなで大変もてるらしい彼は、しかし誰かと付き合っているという噂を聞いたことはなかった。
が、なんのことはない。
ただ同じ学校の人間と付き合ってはいなかったというだけのことだ。
同じ年齢の少女では物足りないのか、それともただの嗜好か、付き合っている女性はどうやらそれなりに金も分別ももったお姉さま方らしい。
なんて厭らしい奴なんだ。
みんな、スタイルだってよくて……。
確かに痩せたり太ったりということは自分の意思で多少どうにかなることかもしれない。
でも、胸は……。
胸、は、どうしようもないではないか。
そりゃあ実際ルルーシュは小さい。
シャーリーの隣に立ちたくない。
カレンの隣だった嫌だし、ミレイなんてもっての他だ。
個人差というものはあらゆるところで問題になることだが、まさかこんなところで彼女たちに劣等感を抱くとは。
明日恨めしそうな顔で見ないように注意しなくては。
こんな、枢木スザクのせいで彼女たちとの関係までおかしくなってはたまらない。
同情されるのだって、ミレイにからかわれるのだってごめんだ。
けれどどんなに考えたって、胸を大きくする方法など思いつかなかった。
とりあえずそれは置いとくとして、他の何かで見返してやれないかとも思ったが。
たとえば料理とか。
男は手料理に弱いというし、ルルーシュはこと家事に関しては自信がある。
それはもう、本日の安売りから掃除、洗濯、節約術までなんでもござれだ――そこまでするからまたスザクにしてみれば魅力のない女に映るのかもしれない。家庭的というよりは、おばさん臭い、とかなんとか。
だが人間おいしいものには弱いはずだ。
その信念のもとに気合を入れて作ってみた。
実際ルルーシュはスザクに美味いと言わせることができた。
できた、けれどもまさかそれに何の意味もないとは思ってもみなかった。
簡単にいえば、スザクは料理もできた。
同居なのだから役割分担は平等にいこうと提案された時は驚いたものだが、なんのことはない、スザクはルルーシュに借りを作りたくなかっただけ、あるいは必要以上に干渉されないためのルールにすぎなかったのだ。
ただし、個人プレイですべてを片付けるのはさすがに効率が悪い。
よって、全てが当番制となった。
夕飯についても一日置きだ。
しかもあろうことか、おいしかった。
台所に立つスザクの姿に大丈夫だろうかと不安になった自分を絞殺したくなるほどにはおいしかった。
また昼に弁当をつくってやろうかと思ったのだが、一日目、作ってしまってから後悔した。
そういえばスザクには毎日弁当の差し入れをしてくれる女の子たち――こっちもこっちで驚くべきことに当番制らしい――がいたのだった。
余計なことをしてしまった。
はたと気づいたルルーシュは、それでも弁当を捨てることはできなくて、結局スザクに見つかって馬鹿にされないようこそこそと自分で二つ持って行って、一つを同じ生徒会役員で昼はいつも買い弁のリヴァルに食べてもらった。リヴァルが助かったと礼を言ってくれたので、ルルーシュも少し救われた。
餌付け作戦は失敗だ。
掃除や洗濯に関しても当番制なのだから問題外。
とりあえず目についたのでシャツのアイロンはかけておいてやったが、こんなことでしかも頼まれてもいないのに勝手にやって恩着せがましく言うのも己を矮小に見せてしまうので論外だ。
ルルーシュが運動でスザクに勝てるはずもなく、性格もよろしくなく――さすがに自覚くらいあるのだ――スタイルもいまいち、顔はきつめなのでとっつきづらい、とくれば彼氏などできるはずもなく、恋愛の経験知もスザクには遠く及ばない。
あとスザクに勝てるものといったら勉強ぐらいだが……。
スザクが別段重きをおいていない時点で勝負になどなりやしない。
どうしようもなくなったルルーシュはとりあえずさっさと着替えてしまおうと思って真っ青になった。
パンツがない。
絶対にもってきたはずだ。
着替えようと手をのばした時にしっかり見たのだから。
まさか、と思ってめまいがした。
手をのばした。
確かにとった。
そしてそれからルルーシュは、手にもった何かを、スザクに投げつけはしなかっただろうか。
……………………投げつけた。
スザクは興味も持たずに洗濯機の上において。
おそるおそる振り返ると、洗濯機の上には確かにルルーシュの下着があった。
拝啓今は亡き戸籍上は父へ。
あなたの目論見通り、娘はしっかり清らかなまま毎日を過ごしています。
そちらは母と二人さぞや楽しい毎日をお送りでしょう。
あとのことは心配するな。手筈はすべて整えてあると聞かされたその日、自分の部屋がからっぽだったときの衝撃をあなたは想像することができるでしょうか。
どうしようもなくなって指定された場所へ行き、これから男と、異性と、二人で暮らさなければならないと知ったときの絶望をあなたはご存じでしょか。
でていこう、と何度だって思いました。
けれど、私にはあの男に背を向けて敗北を認めることなどできませんでした。
気がつけば売り言葉に買い言葉、そこでの生活を余儀なくされたのもあなたの計算通りだったのかと思うと家に火を放ちたくなる思いです。あいにくマンションのため、隣近所に迷惑をかけるわけにもいきませんのでおとなしくしていますが。とりあえずアルバムにあったロールを抜き取って釘を打ち付けておきました。
更には「何があろうと問題はない。彼が責任をとってくれる」と言い放った貴方の真意は、嫁に行き損ねそうな娘をおもんぱかってですか、それとも面倒事が起きることを忌避したスザクが絶対に私にだけは手をださないことを見越した上での言葉ですか。そんなことをしなくても彼のストライクゾーンの真後ろにいる私には全く関係のないことでしたよ。というか私はまだ17なのですから、気が早すぎではないでしょうか。それとも自分の娘の年すら記憶にありませんか。これだから呆け老人は嫌いです。自分の面倒は自分でみるので放っておいてください。
とにかく、こちらは何事もありません。
そちらには何事かがあることを祈ります。
あなたの奥方の娘より。
心の中で文をつづった直後に携帯がなった。
取る気も失せるような、また、周りがうるさければ絶対に気付かない着信メロディはお経だ。
今回気づいてしまったこと自体に舌打ちをしてルルーシュは携帯をとった。
通話ボタンを押して、どなった。
「さっさと成仏してください」
――父はあ、まだぁ、死んでおら……。
切った。
しかしながら人間というものは、慣れる生き物である。
順応とも言うが、とにかく。
一ヶ月後もすると。
慣れた。
可愛くない。
全くもって可愛げがない。
ルルーシュは綺麗だけれども可愛げがない。
確かに自分も悪かった、とは思う…………少しだけ。
でもだって、まさか、だからってこんな風になるなんて誰が予想できたというのだ。
スザクの目の前にはルルーシュがソファで寝ている。
それだけならば別にかまわなかった。
一応同居しているのだから、少しは気を使えと言えないこともなかったが、裏を返せばここは彼女の家でもあるということになるのだ。寛ごうが何しようがそこまで咎めることでもない。
また他の問題に比べればどうでもいいほど小さいものだ。
寝るのはいい。
無防備だろうがなんだろうが、その程度で揺らぐ決意ではないからいい――ルルーシュの身体が未発達で本当によかった。先に付き合いのある女性の一人で発散してから帰ってきて本当によかった。でなければ笑いごとでなく間違いが起きるところだった。
細くて長い脚が惜しげなくさらされているのを見てそう思った。
相変わらず胸以外は完璧だ。
頬にかかった髪を溜息とともに払ってやる。
無防備というよりは無頓着というのだろう。
そうしてしまったのは確かにスザクなのだけれど。
あまりにスザクが情欲の対象にならないと言い続けてきたせいで、今ではルルーシュはかなりフリーダムに家の中で過ごしてくださっている。
もともときついのは好きじゃないんだろう。
帰ってきたらブラジャーはとってしまうし――そういえば、意味ないだろなんてからかった覚えがある。
パンツで平気でうろうろするし――今だって身につけているものはシャツとパンツだけだ。あわい色の突起が見事に透けている。
最近では裸を見られても、まるで兄弟か何かのように反応がなくなった。
平然とそこのタオルを投げてくれなどと言い出すしまつだ。
全くもって可愛くない。
どうしてくれようかと思う。
ただし手を出すのはまずい。
彼女の父親から「わかってぇ、いるだろぅなぁ」と巻き舌で脅しまでくらっているのだ。
ならば同じ年の男のところに娘をおいておくなよと心底思ったし、何をわかっているのか正直何もわからなかったのだが、うなずいてしまったのだから仕方がない。
一度言ったことを翻すようなことはできない。
実際手頃なところにいるというだけで、手をだす理由になどならないし、女など腐るほどいるのだ。人口比だと多少男よりも少ないらしいが、それでもほぼ半数。何もわざわざ彼女に手をだす必要はない。
しかしながらそれでも無償に腹が立って、スザクはルルーシュの頬をつねった。
「おい、起きろよルルーシュ。んなところで寝られると邪魔だ」
ふるりと睫毛が震えた。
唇がうっすらと開かれて吐息がこぼれた。
「んっ……」
ああもう本当に、胸以外は完璧だ。
こんな同居、早く終わってしまえばいい。
そしたら変な縛りもなくなってしまうのに。
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【言い訳】(反転)
どこの厨だと言いながら書いてました。楽しかったです。
もう他に言うべきことが見当たりません。楽しかったです。
あほな自分に泣きたくなりながら、やっぱり楽しかったです。
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