1.スザクの恋人を別れさせるため日本に行くルルーシュ です
自分で何を書きたかったのか忘れてしまったため、若干内容にズレが生じています。
が、もう矛盾点とか全部見ないように盲目的な感じでどうぞ(意味不明だよ)
ひとつ。彼女を心の底から愛すこと。
ひとつ。思いやりの心をもっていること。
ひとつ。気配りができること。
ひとつ。絶対に激昂しないこと。手をあげるなど言語道断。
ひとつ。度胸があること。
ひとつ。腕が立つこと。
ひとつ。頭がまわること。
「なんだそれは」
延々に続きそうな演説にうんざりしてC.C.はとうとう口をはさんだ。
ルルーシュの言葉を右から左に流すことなど朝飯前だが、BGMとしてでもこのまま聴き続けていたところで埒が明かない。
簡単にいえば鬱陶しくなってきた。
「ナナリーの婿の条件だ」
なるほど。
小姑が御苦労なことだ。
ナナリーと、誰だか知らないがナナリーの婿候補も面倒に思っていることだろう。
まあとにかくルルーシュの気持ちは耳が腐るほどよくわかった。
だが、それをC.C.に言ったところでどうなるのか。
ぶっちゃけ言われてもどうしようもないのだが。
「それからこれが最も大切なことなんだが」
「ほう」
遠まわしにそろそろ黙って頭の中だけで考えてろと言ったのはどうやら通じなかったらしい。
そんなんだから女心がわかってないといわれるのだ。
童貞坊やが。
「聞いてるかC.C.」
何故聞かねばならないのか理解に苦しむ。
しかしながらこれでも彼はC.C.が幼い頃から見守っていた大切な友人の忘れ形見でもある。
私のかわりにあの子たちをと言って死んでいった彼女の気持ちを考えると無碍にはできない。
そう、できないので頼まれてやるからその代りに最大限楽しませてもらわないと割に合わないというものだ――その彼の人格形成に大きくかかわっていることはまるっきり棚にあげてC.C.はしぶしぶとうなずいた。
「これだけ近くにいるんだ。そんなにどならなくても聞こえる」
「いいか」
あまりよくはないが。
できるなら早く終わらせてくれ。
「ナナリーの相手は何より誠実でなければ、俺は認めない!」
前提条件として、この部屋にいるのはルルーシュとC.C.の二人だけである。
そんなところで宣言されてもC.C.には「そうか」としか言えないのだがルルーシュは一体何を望んでいるのだろうか。
しかも何故そこまでテンションが高いのだろうか。
婿とは言ったがナナリーはまだ中学生なのだから嫁に行くには早すぎる。
ならば彼氏でもできたかと思ったが、もはや病気としか言いようのないブラコンの高い壁を破って彼氏の座におさまったつわものが存在するとしたら、その地位を確立する前にルルーシュと一線も十戦も交えていなければおかしいし、そうなっているならばC.C.の耳に入ってこないわけがない。
ではとうとう立候補者でもあらわれたか――いや、立候補者自体は昔から何人もいたはずだ。兄とは違って妹は本当に純粋でかわいらしく誰からも愛される娘なのだ。
兄のひねくれぶりをみていれば何故ああもまっすぐ育つことができたのかがむしろわからない。
やはりあれだろうか。
C.C.の育て方がよかったのだろうか――ルルーシュが聞けばすぐさま追い出しそうなことを平気で考えた。
「とりあえずお前の決意はわかったが、そんなことはナナリーに彼氏ができてから言ったらどうだ」
あくび混じりに言ってやる。
「C.C.お前……。俺の話を聞いていなかったな!?」
悪いがルルーシュの話など全部聞いていれば朝刊が来る。
それに付き合ってやれるほどC.C.は暇ではないのだ。
たとえ暇だったとしても、ピザを食べるかあるいは昼寝でもしていたほうがよっぽど有意義だ。
「簡潔にな」
要点だけまとめてあらためて言えといったC.C.をルルーシュが睨みつける。
「ナナリーの婚約者が決まったと言ったんだ」
しかしながらきちんと言い直した。
かわいそうに。これはきっとあれだ。
C.C.以外相手をしてくれる人がいないから、言い直すしかなかったとみた。
「めでたいな」
それは初耳だ。
おめでとうと言ってやれば予想に一ミリもたがわずにルルーシュの顔が歪んだ。
このブラコンはもう本当にどうしようもない。
早く卒業しなければみんなが迷惑するというのに。
母親が早くに死んでしまい、父親は全く頼りにならないと、早くから妹を守らなければという強迫観念――もはや信念は通り過ぎた――に駆り立てられていたせいか、人生がイコールで妹となってしまっているに違いないルルーシュも、そろそろ妹離れをしなければならない。心優しいナナリーは兄を迷惑だと言ったことはないし、おそらくこれからもそんなことを思うことすらないのだろう。だからこそC.C.が代わりに言わねばなるまい。
そろそろ妹に依存するのはやめろ、と。
ナナリーの人生はナナリーのものであってルルーシュのものではない。必要以上に介入し、幸せを奪う権利などないのだと。
「めでたい、だと?」
地を這うような声に、やはり無駄だと早々に悟ったので、やっぱりやめた。
そのうち誰かが言うだろう。
C.C.は無駄なことに時間と体力を費やすのは趣味ではない。
「何がめでたいものか!」
「普通に考えてめでたいニュースだろ。お前もナナリーもいい年ごろだ。お互いに自分の幸せを追ったところでバチはあたるまいよ」
ナナリーのために一応これくらいは言っておいてやるが。
考えるまでもない。
こんな言い方では右から左に聞き流しすらされないだろう。
右に入る前に跳ね返される。
「一方的にあったことも話したこともない相手と無理やり契らせられるのがめでたいと言うのかおまえは!?」
「それは仕方のないことだ。わかりきっていたことだろうに。お前たちは腐っても皇族だろう? 少なくとも、マリアンヌが死んだ時、他の道を選ぶこともできただろうに、皇族として庇護を受けることを選んだ時点でこうなることは決定事項だと、そんなことも考えなかったのか? こうなってくると問題は相手じゃない。その相手とどういう関係をこれから築いていくかということだ」
「相手じゃない? ふざけるなっ!」
相手への条件として激昂するなとあげた兄は唾を飛ばしてどなり散らす。少々高望みがすぎるのではないだろうか。
「見てみろこれを!」
「なんだ、これ」
渡された書類は厚かった。
一番上に調査書と書いてある。
「枢木スザク?」
「相手の名前だ」
なるほど。
準備がいいことだ。
というか、ずいぶんと字も細かく情報量が半端なさそうなのだが、これはプライバシーの侵害にあたらないのだろうか。
いや、絶対に犯罪だ。
犯罪に違いない。
そんなものに手を染めたくないというのを理由に、C.C.はそれを読まずに放り投げた――単純に面倒だったのが一番の理由だが。
「何が不満なのか十文字で説明しろ」
「そいつは女癖が最悪だ」
きっちり十文字だった。
「婚約するにあたってしっかり清算はさせられたようだがな、こんな汚れた人間にナナリーを渡すわけにはいかん」
「で? お前がここでわめいたところで何か変わるのか?」
結局手も足も出ずに指をくわえて見ていることしかできないではないかと言ってやれば、馬鹿にするなと即座に返事が返ってきた。
「俺は日本へ行く」
「本人に会う気か?」
深々とうなずいてからルルーシュは悪役的な笑い声をあげた。
「首をあらって待っていろ、枢木スザク。この縁談、俺がぶち壊してくれる!」
なるほど。
どうやら相当暇を持て余しているようだ。
そういえば、聞くのを忘れていた。
「具体的にはどうするつもりなんだ」
ルルーシュの背中をつっつけば、心底呆れたと顔にかいてルルーシュが振り返った。
「お前、ここでそれを言うのか?」
もっと早く言うだろう普通、とルルーシュは言うが、なんだか異様な雰囲気をかもして着々と用意をすすめるルルーシュになんというか、声をかけるのがはばかられたのだ。
そう、邪魔するのが申し訳ないというか。
下手に口をだして我にかえってもらっては楽しくないというか。
しかしもうここまで来てはさすがに引き返すことはしないだろう。
具体的な案を是非とも聞いておきたい。
なぜなら策をしっかり把握しておかねば失敗したと笑ってやることができないからだ。
失敗することを前提に話しているが、今回に限ってはC.C.は失敗することにピザ10枚ほど賭けている。
基本頭はおもしろいくらいにくるくる回るし、謀はルルーシュの専売特許だが、それでも失敗に賭けている。理由は、少々頭に血が上りすぎているからだ。
冷静であったならば話はまた別だが、妹がらみの件に関しては理性自体を吹き飛ばしてしまっているので空回りしかしない。
実際ルルーシュの格好を見たときC.C.は気でも狂ったかと思った。
紺を基調にした葡萄模様――とはいってももちろん実ではなく葉だ――の着物の身をつつみ、髪は結いあげ小さな簪をさし、帯はいまいちどんな風になってそうなったのか変わった結び目になっている。
和服美人と言えないこともない。マリアンヌに似た顔だけは文句のつけようがなく、確かに整っていることには整っているが。
が、どちらかというと日本に観光にきて冷やかしている外人というイメージなのだが本当にそれでいいのだろうか。
どう見ても女物なのだが、何度も聞くがほんっとうにそれでいいのだろうか。
文化の調査で間違った知識を拾ってきてはいないだろうか。
……まあ、なんだ。失敗したときに慰めるくらいはしてやろう。
「いや。なんというか。本当にその服装でいいのかと思ってだな」
一応指摘してみると、ルルーシュも少し眉を寄せた。
「ああ。俺は黒のほうが好きだと言ったんだがな。若いんだからもっと派手なのをと言われて。とりあえず折衷案で紺になった」
………………なんだろう。いろいろ申し訳ない気持ちになった。
「女装…………に、見えるんだが」
「当たり前だろ。女装してるんだから。…………やっぱりこれだとまだ男だとばれるか? いろいろ意見を聞いてこれなら大丈夫だと思ったんだが」
不安そうに言われてどうしようかと思った。
この様子を見て男だと断定する人間がいたら見てみたいものだ。
もともと中性的な顔つきで、男臭さとは無縁のルルーシュに、C.C.はいつか男に襲われるのではないかと微妙に心配半分期待半分で見守ってきた。けれど性格は激しいわ言葉は悪いわで男どころか異性にすらそこまで興味を抱いていなかったはずだが、いったい何がどうしたというのだろうか。新たな趣味でも開拓してしまったのか。いやまさか、とは思うのだが。
「いや。女にしか見えない。じゃなくて、なぜ女の格好をする必要があるのかと聞いている」
女の格好という観点においてのみ言うならば、着物というチョイスは間違ってはいないだろう。男は大和撫子に弱いというのもあるが、それよりも着物は体型を隠す。顔は問題ないとしても身体は正真正銘の男なのだから身体の線がでてしまうような服装は論外だ。コルセットで締め上げて装飾過多なドレスでも一応隠れるが、それだと外には出られない。着物で出歩く女性というのも今の時分珍しいがいないわけではないし。だから冷やかしの外人に見えるおかげでむしろ違和感は軽減されているし。
「これから俺は枢木スザクをおとす」
こぶしを握って言われた言葉にまず耳を疑った。
それからルルーシュの正気を疑った――女装なんてしているからまさかと思ったが、やはり気が狂ったらしい。
「いいか、C.C.。過去の女性遍歴は一通り清算されているからして厭味にはなっても破断の決定打にはならない。だが、現在進行形なら話は別だ。とりあえず計画はこうだ。枢木スザクを俺に惚れさせる。まあそこまでは無理でも既成事実さえあればいい。ディートハルトをつれてきた。俺が近づきさえすればいい絵を撮ってくれるだろう。それを理由に婚約破棄に持ち込む」
どうだ完璧だろうと胸を張って言われたが、どうにも胸騒ぎがする。
そもそも恋愛ごとに疎いルルーシュが出張るという時点で頭の痛いことがおきそうな気がするのはC.C.だけだろうか。
相手はそれなりに女性との付き合いがある男だというし、ルルーシュなど上手く遊ばれて終わりなのではなかろうか。確かに今のルルーシュに迫らせて悪い気分になる男はいないだろうが、だからこそ危ないとも言える。
「お前、本当に既成事実を作られてしまったらどうする気だ」
苦虫をかみつぶしたような顔で言ったC.C.にルルーシュはきょとんとした。ああ、だめだこれは。
「だから、女の格好をしているんだろう、お前は。襲われたらどうするんだと言っている」
「俺は男だぞ? たとえ襲われたからと言って裸になってしまえばそれで終わりだろうが」
C.C.は友に謝った。
すまないマリアンヌ。お前の息子はきっとこの経験を糧にまた一歩大人になることだろう。
「調査書によれば枢木スザクは毎日この時間にこの道を通るはずなんだが……」
「ビンゴだな。来たぞ」
写真にあった顔を人ごみの中から見つけた。
ただ、彼はひとりではなかった。
問題は、友達と連れ立って歩いているという風にも見えなかったことだ。
横のルルーシュをそっと窺う。
ぷるぷると震えるこぶしを見て、C.C.はため息をついた。
「ルルー……」
「あいつっ」
「そうだな腹が立つなよな。見つからなければいいという問題ではないものな。国際問題に発展しかねないということを理解していないおろかものだ。だがな、ルルーシュ。お前にとっては都合がいいだろう? さっさと写真を撮って」
帰ろうではないか。何もルルーシュ、お前が危険な橋を渡ることはない。かえってピザでも食べよう。特別にお前にもわけてやる。C.C.が珍しくも譲ってやった言葉にさえ反応しない。
「作戦変更だ。落としてやる。絶対に俺に惚れさせてやる。そして男に惚れた自分を死にたいほど嫌悪するがいい。ナナリーをないがしろにした男、許すまじ。目にもの見せてくれる」
事態は悪い方向にしか進まないようにできているのだろうか。
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【言い訳】(反転)
以上、婚約?は?な話でした。
この話が一番お題から離れています。が、確か、書こうとしていたのは、他の話が婚約後の話なのに対して婚約にこぎつけるまでの話だった気が……
いやもう本当に何にも覚えてなくて焦りました。書いてる途中に一回寝ましたしね(え)
とにかく私は女装ルルーシュかけたのでもういいです。
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