アニャルル おまけ

注意:完成度が低いです。
   若干スザクにきびしめですので、各自のご判断でお読みください。管理人自体はアンチスザクじゃありません。むしろ欠乏症になるくらいには愛してます。





















 とりあえず格納庫にいつまでもたまってはいられない。
 移動はしたものの、だからといって落ち着ける者などいないに等しかったが。せいぜい全てを知るC.C.がどうでもよさそうに欠伸をし、常に物事を楽しむ傾向にあるラクシャータが諦めたように肩をすくめたぐらいだ。ついで開き直ったらしく、今の今まで敵のくせにゼロを守るだとか言い出した少女に握手を求め、機体に触っていいか許可をとっていた。彼女の興味はすでに少女のナイトメアにあるらしい。技術者としては間違っていない姿だが、複雑な思いになったものは多いらしくカレンが盛大に眉を顰めていた。カレンとしてはゼロに伺いをたてる少女の姿も、それに安心させるようにラクシャータの紹介をしてやるゼロも気に入らなかったようだが。

 

 可愛らしいことだなとC.C.は1人嘯いた。

 忠信は人一倍。
 更に仮面の下を知っても、ゼロを見限ることなく尽くす――さすがに完全に受け入れるには多少の時間がかかったが。
 それでも1人山を乗り越えて決心の固まった彼女の存在は、頼もしい存在といえよう。

 

 しかし報われない。


 情緒の発達の遅れているらしい彼女の思い人――その思いがどういった意味であれ――は仮面があろうがなかろうが、腕の中の少女が最優先事項なのだから。
 腕に抱えたまま誰に託すことなく運ぶのは、もちろんほかの誰の手にも触れさせたくないからに決まっている。

 


「ゼロ、きちんと説明して欲しい」

 気持ちは落ち着かないが、とりあえず腰を落ち着けたところで、自分の役目とばかりに一泊おいて扇が切り出した。
 一斉にゼロに視線が集まった。
 自然、その横にちょこんと座る皇女と、皇女の斜め後ろに控えるアーニャと名乗ったブリタニア人も視界に入ることとなる。
 なかなか不思議な光景だ。
 違和感がないのが――ゼロの姿が浮かないこともないが、ルルーシュに置き換えれば――またC.C.の笑いをさそう。

 

 素晴らしい。
 あるべき姿だ。
 何よりマリアンヌの望んだ姿だ。


 だが自覚がないのがなんとも言えない。
 彼らは誰も、何も知らないのだ。


「何が知りたい、扇」
「どうして彼女を」
「お前は作戦の意義を理解していなかったのか?」

「いや、そうじゃない。そうじゃなくて、ゼロ。どうやって彼女を連れてくることができたんだ」


 C.C.には扇が何を言いたいのか理解できたが、言葉の選び方が悪すぎる。


「言っただろう? もう一つ用意していた手段だ」


 嘘だ。
 ぬけぬけとよく言う。
 まあこの程度のことなどゼロにとっては嘘にも入らないようなものだろうが。


「方法を聞いているのなら、そうだな奇跡とでも言っておこうか」


 言外に話す気はないという。
 だから聞いていることは少し違うと思うのだが。


「じゃなくて、皇女殿下が納得してここにいる気がするんだが!」


 律儀な男だ。
 敵に敬称をつけている――無意識だろう。


「ええ、私は私の意志でゼロと共にきました」
 

 柔らかく答えたのは当の皇女殿下だ。
 事実上敵に捕らわれているというのに一切怯えることのない姿は、事情を知らない者の目にはどう写るだろうか。
 毅然とした新総督らしい態度ととるか。
 事態の重大性を理解していない幼い少女ととるか。
 皇族故の愚かしさととるか。
 あるいは得体が知れないと思うか。

 

 それともゼロが何をしたのか考えるか。

 

「何故ですか」
「ゼロが約束してくださったからです」
「何をか聞いても宜しいですか」


 扇の声は硬い。
 皇族を敵とする黒の騎士団のトップであるゼロが皇族と取引をしたとなればどうなるか。
 ただでさえゼロはブラックリベリオンの件で一度信頼を失っている。
 扇が過敏に警戒するのも当然だと言える。


「お兄様を返してくださると」

 

 しかし軽く返ってきたのは考えていた候補に掠りもしない答えだ。

 

「お兄様?」


 そこでクロヴィスの顔が浮かぶのはまあ仕方のないことかもしれない。

 腹違いだが列記とした兄だ。
 仲が良かったのかもしれない。何せ彼女は騎士団のせいで治安が悪化しているエリア11に、足と目というハンデを背負いながら総督としてやってきたのだ。
 特別な思い入れがあるのかもしれないと勘ぐれないこともない。

 また、クロヴィスは黒の騎士団が最初に葬った敵である。
 だが、だからこそ返すことなどできないというのに。
 ゼロは一体何を考えているのか。


 こんなところだろう。
 根が素直な男は読みやすくて面白味がない。
 いや、C.C.にとってはこちらこそ突拍子もないことだ。少し楽しませてもらった。


「それはルルーシュ君のことか」


 えぇっと、と、あまりな答えに言葉を失った扇の代わりとばかりに、沈黙を破ったのは藤堂だった。
 さすがに冷静さを失わないか。
 でてきた名前にカレンの肩だけが跳ねた。

「はい」

 でてきた兄の名前にナナリーがどこか声の質をかえて頷いた。
 いつもながらこの兄妹愛には感服する。

「何か、ご存知なんですか」

 カレンの声は若干震えているようにも聞こえた。
 そういえばカレンはルルーシュと藤堂の繋がりを教えていなかったか――特に話すべきことではない。
 寝耳に水とはこのことだろう。


「昔、少しな。それで返すとは?」
「言葉のとおりです」
「そういえば一緒に皇族に復帰したとは聞かなかったな。彼は」
「お兄様は行方不明です。ブラックリベリオンから」


 さらりと、だからこそ感情のこもらない声にカレンが耐えきれずに言葉をこぼす。
 そこに意味はない。


「ルルーシュは、学園に」


 だからなんだと、C.C.にはナナリーの声が聞こえる気がする。


「それは、本当にお兄様ですか?」

 静かな声は恐怖さえ誘う。


「私を『知らない』というあの人は、私のお兄様ですか?」
「ナナリー」
「でも、ゼロは約束してくださいました。すべてがおわれば、お兄様を私に返してくださると。私はどうしようもない人間なんです、カレンさん」


 それでも微笑んで。


「お兄様さえいれば、他はどうだっていいんです」


 ルルーシュは口をはさまない。
 いや、はさめないと言うべきか。

「だから、絶対に返してくださいね?」

 まるで、見えているかのように、ナナリーはゼロを見上げる。

「………………ああ」

 視線が交差することはない。
 そのかわりにじっと、アーニャがみつめる中で、ルルーシュがうなずいた。


 でも、とカレンが口を開く。

「なら何故皇位継承権を回復して、総督なんかになったの」
「目立つでしょう? 私は見えませんから、だからどうしてもお兄様に見つけてもらわなくちゃいけなかったんです」


 それだけですと言い切る彼女に罪悪感はなく。
 少し、寒気が走った。


「やるからには、きっとどこかで見てくださっているはずのお兄様に誇れる仕事をしようと思いましたけど、ダメですね私は」


 ひとつの前にはすべてが無意味と彼女は言う。

 

 さらにカレンが続けようとするのを、聞き覚えのない電子音が遮った。
 携帯の着信音だろか。
 えらく無機質でシンプルなそれは、誰のものだろうと思う前に、アーニャが無造作に己の携帯を耳にあてたことにより判明した。

「おまえっ、やっぱり裏切り者なんじゃないかよ!」
「うるさい」


 彼女は玉城が嫌いなのだろうか。
 先ほどからどうにも冷たい。
 まあ、ゼロとナナリー以外の人間に対してはそうそう変わらないような気がするが。


「アールストレム卿?」


 それでもゼロが尋ねれば、彼女は短く答えた。


「スザク。なんか叫んでるけど。……殿下」

 叫んでいる理由も内容も、わざわざきかずともわかるだろう。

「え、なんですか? アーニャさん」
「言いたいことがあるならかわる」


 彼女自身もあまり聞く気がないのだろう。
 うるさげに耳元からはなすと、電源ボタンを押そうとして、少しだけ躊躇した。
 対してナナリーは少し考えるそぶりをみせた。

 

「じゃあ。ちょっとだけ」


 ふふ、とかわいらしく笑って彼女は携帯を受け取った。


 そして。

 

 

 叫んだ。

 

 


「スザクさんなんかだいっきらいです!」

 

 


 子供の喧嘩か。

 

 

 

「ゼロと一緒にいます。ええ、アーニャさんも一緒です。え? 帰りませんよ? だってスザクさん、うそつきじゃないですか」


 ――何のことだい、ナナリー?


 耳を澄ませればかろうじて焦った男の声が聞こえた。


「私怒ってるんです。私からお兄様を盗っていったのは、スザクさんだったんですね」

 

 ――それは、ゼロから?

 

「さあ、どうでしょう」


 ――ルルーシュはやってはならないことをしたんだ。ルルーシュのやり方は間違っていた。

 

「そんなことが問題だと誰が言ったんです? お兄様が間違っていようが罪をおかそうが、罰をうけようが」


 究極的にはそれすらどうでもいいのだと、彼女は言いきった。
 横にいるのが兄と知ってそれを言うのは、彼女も今回の件に関しては相当腹を据えかねていたということだろう。
 これはなだめるのが大変そうだ。

 

「お兄様を私から奪い取っていったあなたが憎いです。なんでいっそのこと一緒に殺してくださらなかったのですか」

 

 平然と、そんなことまで言いだした15才の少女に、その背景にただならぬものを感じて、約半数の人間がその目を見開いた。
 ルルーシュの顔色はあいにくと仮面のせいでわからない。

 

 


「裏切り者」

 

 歌うようにそう言って。

 

 

「さようなら」

 


 別れを告げた。









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【言い訳】(反転)
これでアニャルル、寝返り、初恋、のとりあえずアンケートのコメントに入っていた要素をできる限り頑張っていれこんでみたのですが、どうでしょう? 無理がある気がしてなりません
とにかくここまで読んでくださってありがとうございますm(_ _)m
もし時間に余裕ありましたら、お言葉をもらえるとうれしく思います。
スザルルサイトを掲げてやってるくせに、アニャルル(しかも最後ちょっとアンチスザク)なんて本当に需要あったんだろうかorz