妊婦ルルーシュ おまけ 2

注意:こんどこそ本編補足。何も解決されてない上に、ものすごい強引な手をつかった結果の歪みは以降に影響してくるでしょう、と、いう話。なので前回の不自然な点をすべて持ち越してしまおうというなんともあざといおまけ(……というかそれを本編で伝えられたらよかったのですが、文章力のなさに落ち込みます)
しかも変なところで終わってます。気持ちの悪さを保障します(待て)前回ので自己補完ができてる人は読まないほうがお勧めです。
















 スザクと喧嘩した。


 原因はくだらないことだ。

 女に会ったとルルーシュがこぼしたことから始まった。

 

 

 子供を連れて公園にでてた時の話だ。
 それ自体は大したことじゃない。
 まさか家に引きこもって暮らしているわけでもあるまいし、子供が小さいなら外で遊ばせてやるのは親の役目だ。

 くれぐれも気をつけてねと、スザクが何を警戒しているのかなど知らない――だって話してくれないのだから。
 それが一般的な車に、だったり何があるかわからないんだから、といった理由でないことは明らかだった。

 スザクには明確な「何か」が見えているのだろう。
 ピリピリした空気はそう告げていた。
 だがそれが何なのか決して口を割ろうとしなかった。
 不満だった。
 仮にも夫婦だろうに、何も言ってくれない、それどころかあからさまに隠そうとするスザクの態度が不満だった。


 ルルーシュに一切悟らせずにであればよかった。
 何も秘密を持つなと言ってるわけじゃないのだ。
 隠しきるのなら何も問題ない。
 気分がよくないのは人間の当然の心理として消し去ることはできないが、気づかないのならそれはとても上手く隠しているということだし、それだけの覚悟があるということだ。もしくは気付かない方が鈍感なだけなのかもしれないが、どちらにしろ実力不足は己であり責める気はない。また世の中には暴いてならないものも、知らない方がいいこともゴロゴロしているのだから。


 だが、あからさまに「ある」と目の前をちらつかせるのならば全く別の話だ。

 

 すでに色々溜まっていたのも原因たろう。

 火を近づければあっくなく燃え上がった。

 








 公園で女に会った。
 緑の髪の、無駄に偉そうな女だった。
 公園という場所がひどく異様だ。


 女といっても少女。
 少女といっても公園で遊びまわるほど幼くはなく、ルルーシュよりも幾つか年下、その程度だ。

 知らない顔――のはずだ。
 少なくともルルーシュの認識ではそうだ。
 だがその場に似合わない彼女は、真っ直ぐにルルーシュのもとにきた。


 そして「ルルーシュ」と、呼んだのだ。


 どこかで見かけたか調べたか一方的に知られているのだと初めは思った。
 よくあることだ。


 中には一方的な知識だけで何もかも知っている気になる人間もいるが、ルルーシュを真っ直ぐに見つめてきた彼女はおそらく、その類ではない――ただの、直感だ。

 

「久しぶりだな」

 

「誰だ」

 

 反射的に子供を確認したルルーシュを彼女は笑った。
 砂場でバケツに土をつめている。
 変わった様子は、ない。

 すぐに抱えて走ることができるか。
 問題となるのはそこだ。
 ゆっくりと立ち位置を変えようとするルルーシュに彼女は気付いたが、何も言わなかった。

 

「私は二度も名乗ってやるほどお人好しじゃない」
「俺は記憶力には自信があるが、お前とは会ったことも話したこともないと断言する」
「そのことに関して言及してると面倒だ。一つ言っておいてやる。私とお前は将来を約束した仲だ」

 

 その言い回しは、嫌がらせに違いない。
 女と将来を約束した覚えなどない。
 あるいは比喩かとも考えたが、その女自体に思い当たるところがないのだから、どちらにしてもおかしな話だ。

 

 そもそもこの偉そうな態度はなんなのだ。
 不快に顔をしかめたルルーシュを、しかし彼女が気にした様子はなかった。

 

 

「本当の話だ。約束通りお前を迎えにきた」
「だから俺はっ」
「お前と約束したわけじゃない。あの、大嘘つき男とだ。今はお前の旦那だそうだな。あいつも強引な手をとるものだ。だがたかが紙切れ一枚で縛れるなんて考えてるんだったら愚かとしか言いようがないな」

 

 そう思うだろうと問われても、ルルーシュにとって不審者は彼女だ。
 しかも話は全然要領を得ない。

 

「大嘘つき?」
「あいつがお前についてる嘘の数を、知りたくはないか?」


 睨みつけた。

 


「お前は誰だ」
「言ったろう? 二度も教えてやる気はない。だがお前は私を知っているさ、ルルーシュ。自力で思い出してもいいが」

 

 そこで一度言葉をきって、女は年に似合わない笑みを浮かべた。


「知りたかったら、バベルタワーへこい」


 日時まで指定されて、新手の宗教勧誘かと思った――まあ馬鹿らしい話だ。




 


 馬鹿らしい話だと、思ったにも関わらず、こんなところまでのこのこと来ているのだから呆れる。


 それというのも全部スザクのせいだ。

 

 あの石頭。

 

 


 一応伝えておいてやるかと昼間の出来事を何気なくスザクに話したルルーシュに、スザクの反応は予測不可能なものだった。
 あんな態度に出られるとわかっていたら絶対に話したりなどしなかった。
 そしてこんなところに来たりもしなかっただろう。
 頭のおかしい女だったと放っておいたに違いない。

 別にあんな女のことルルーシュは知りたいなんて思わなかったのだから。もしそれから二度目の接触があればまた違っただろうが、特に女は現れることもなく。
 なんだかんだで忙しかったルルーシュが、ブリタニア本国からエリア11――日本くんだりまで足を運ぶことなどなかったはずだ。
 なんといっても子育ては体力を使う。

 


 だがまあ、いい機会だったのかもしれない。
 お互い頭を冷やすべきだ。

 

 

 

 

 


 女に会ったと言ったルルーシュに、スザクはつかみかかるかのように詰め寄った。

 

 

 

 


 少女か。
 緑の長い髪か。
 偉そうな態度の奴か。


 たたみかけるように問われたことでわかる。
 彼女は、少なくとも、スザクが知っているという点においては嘘をついていなかったということだ。
 頭から否定せずに考慮の価値があるかもしれないと考えを改めた。

 話がデタラメだったにしても、その中に他にも真実が混じっている可能性はある。


 スザクが、こんなにも取り乱すのならば。

 

 自覚していないのかもしれない、掴まれた腕のあまりの痛みに声をあげたルルーシュにスザクは構わなかった――信じられない。


 どこで会った。
 何を言われた。
 そいつはどこにいった。

 

 返答を本当に求める気があるのか。
 答える暇さえ与えられず。

 真意を問うてもシカトされ。


 いい加減にしろ、落ち着けと言ったルルーシュをスザクは閉じこめようとした――正気の沙汰とは思えない。


 あの女はなんなのか。
 スザクとはどういう関係なのか。
 約束とは何だ。
 そんなに取り乱す理由は。

 

 一つでも、もし明確な答えをくれなかったとしてもだ、一つでもまともに取り合ってくれたなら、もっと別の方法もあったろうに。

 

 スザクが悪いのだ。


 人の声には耳を傾けず、果ては本当に拘束しようとした。
 だからルルーシュも正攻法を放棄した。


 簡単なことだ。
 従順に頷いて、抵抗はせず、受け入れてやる。
 白々しくも愛を囁いて、背中に腕をまわしたところで自分もおちたものだと思った。


 だが。
 肉を切らせて骨を断つと偉大なる先人の教えがある。

 

 スザクが言う気がないのなら、自分で調べる。
 当然の結論だろう。


 スザクとて子供のいる家で母親を拘束できるわけもなく、仕事もある。
 大人しく、聞き分けよくではない、仕方がないなと呆れて折れる様子を見せてやった。
 もちろん言える時がきたら教えてくれと伝えて。

 

 疑っているのは明らかだった。
 けれどどんな態度をとったとしてもスザクは納得しなかっただろう。
 ルルーシュは物理的に繋がれるのを阻止せることだけに全力を注いだ。


 後ろ髪を引かれる思いで、サボることなど許されない仕事にでかけていった。
 家からでないようにと何回繰り返されたかわからない。


 チャンスは、1日あるかないか。
 この様子ではなんらかの手をうって本気でルルーシュを閉じ込めてくるだろうと当たりをつけたルルーシュは躊躇わなかった。

 

 もちろんドアには厳重にロックがかけられていたが、それはどちらかといえばルルーシュの管轄だ。
 一朝一夕の知識でどうにかなるなど思われては困る。

 子供を連れてルルーシュが外にでたのはスザクが家をでてから一時間とたっていなかった。

 


 傍から見れば「実家に帰らせていただきます」だが、ルルーシュはスザクを見限るつもりはなかったので、気分は旅行だ。
 そういえばしばらくロロにも会っていない。
 本国へおいでと言ったのに、アッシュフォードを卒業したいと言い張った弟は、もしかして好きな人でもできたのだろうか。
 時がたつのは早い。

 


 どんな子だとさっきから迫ってみているのだが、ロロは首を横にふるばかりだ。別にケチをつけたりはしない、ただお前に相応しいかどうこの目でみたいのだと言ったルルーシュにロロは冷たい――ケチをつける気まんまんだということに何故か本人は気づいていない。


 そう、久々の実家――といっていいものか迷うが――に、突然だったにも関わらず暖かく迎え入れてくれた弟に、家族とはいいものだとあらためて噛み締めた。
 少しでも長く一緒にいたいとバベルタワーについてくるといいだしたのにはさすがに面食らったが、いじらしい弟のおねだりだ。ルルーシュが無碍にできるはずがなかった。


 おいていくわけにもいかないので、幼子を抱いて学生を引き連れていったルルーシュの姿は悪目立ちしていたが、ルルーシュは呼ばれたから来たのだ。あちらも見つけやすいだろうとあえて気にしないことにした。

 


「に――姉さん、ここで何を?」


 今までずっと男装をしていたルルーシュにあわせて兄とよんでいたせいか、いささか心もとない呼び方に苦笑する。
 別にルルーシュとしては兄でもなんでも構わなかったのだが、TPOにあわせて正装をしてきたルルーシュにあわせてなので如何ともしがたい――さすがにこれで兄は違和感がありすぎる。いらぬ誤解を招くこと間違いなしだ。


「さあ」
「さあって……。じゃあなんでこようと思ったの」
「ん?あえていうなら、っぅわ」

 


 余所見をしていたせいだろう。
 前から歩いてきていたコンパニオンの少女――少女だ。また、だ。ここでもナンバーズは歳に関係なく使役される――とぶつかった。

 

「申し訳ありません」


 彼女が悲鳴のようにそう叫び、落としてしまったグラスを拾おうと腰をかがめた、その時だ。

 

 爆音と、振動がその場を襲った。

 

「なっ」


「こっち」

 

 腕を、つかまれた。

 


「姉さん!?」







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【言い訳】(反転)
これで本当に終わります(なんて気持ちの悪い)
本当なら記憶が戻ったあとのスザクへの心情なんかを書いたほうがいいんでしょうが、そこまで行き着きませんでした。とりあえずきょ、今日のところはこれで許しといてや……ってくださいorz
本編の展開に納得がいかないといういくつかのご意見のもと本編補足をさせてもらいました。これで納得しろとは到底言えない矛盾だらけの話ではありますが、解釈の手助けになればと思います。そんな大げさな話でもないと思うんですが。
実際私の中ではもともと(書く気はなかったくせに)こっちにつなげる予定だったことを前提に本編の気持ちの悪い展開を書いたので、この話があとからこじつけたわけじゃないことだけは釈明させてください。
本当に言い訳でした。見苦しいものをお見せしてしまった申し訳ありません。