妊婦ルル 1/6

注意:ルルーシュ女体化注意(今更) 本編前提一部(?)設定変更
DSさんがルル子をパパんの前に引きずり出す→いつのまにか拘束服→着替えさせたのはスザク→ぜってえ犯されてるよ→避妊?するわけないじゃん→あれ?これで孕んでたらどうなるの?(((゜д゜;))) という純粋な疑問から生まれた話です。

















 今日の夕飯はロロのリクエストでホワイトシチューだ。


「食べたいものはあるか?」と聞いたのは何を候補にあげてもいまいちと却下してしまったルルーシュでは決まらなかったからだ。
 それに「じゃあ兄さんのホワイトシチューが食べたいな」と答えた弟は可愛い。

 これがリヴァルあたりだったら、わざわざルルーシュのとつけなくても俺がつくるんだから当たり前だろうと言っていたところだが、そこで「わかったよ。腕によりをかけて作るから楽しみにしてろ」と言ってしまうのがブラコンのブラコンたる所以だ。


 だがルルーシュは手慣れた手つきながらもその動きが鈍い自覚があった。
 なんてことはない普段から食べるメニューだ。
 しかし嫌な予感がする。
 ここのところずっとそうだ。
 今回のシチューだけじゃない。
 最近は何を前にだされてもそうなのだ。
 たかだか夕飯に何をやっているのだと自分でも本気で思うのだが、なかなかメニューが決まらなかったのは、今出来上がっているというのに味見もせずにかきまわしているのは、おそろしかったのだ。


 もちろん物質としてのそれが恐ろしいわけじゃない――そんなオレンジに怯えるどこぞの貴族ぐらいだ。
 それに付随してくる何か、なのだ。

 

 だが、いつまでも避けているわけにもいくまい。
 何かわからないものに怯えるなど、そんな自分は認められない。
 最低でも正体を見極めなければ。
 そうすれば対処の仕様もあるというものだ。
 自分を過大評価するわけではなく、このルルーシュ・ランペルージが対できないはずがないと、シチューをすくうと口元に運んだ。

 

 


 あたたかい湯気。ふんわりとかおるクリームソースの香り。


 嗅ぎなれているはずのそれに、しかしルルーシュはさっと青くなった。

 

 気持ちが悪い。
 反射的に手を口元に持っていく。
 胃のむかつき、吐き気。


 ばっときびすを返して自分の部屋に駆け込んだ。
 それでもまだせり上がってくる吐き気にずるずるとしゃがみこむ。
 左手は胃を押さえ。
 焦点はなかなか定まってくれない。
 これは混乱によるものか。

 

 浅い呼吸を繰り返して乗り切ろうと試みる。
 トイレに駆け込んだら負けな気がした。
 ただでさえ最近あまり食べられていない。
 これ以上吐いたら体力がもたない。

 ずるずると引きずるようにしてたどり着いたベッドに身体を投げ出す。
 きゅっと自分を抱き締めるように丸くなる姿は弱々しく、誰かに見せなれた代物ではない。
 誰も訪ねてくれるなと願うよりは恐怖した。

 

 最近ずっとこうだ。

 

 食べ物の匂いに酔う。
 しかもただ食べたくないと思うだけじゃない。
 必ず付随してくる吐き気にルルーシュの神経は焼き切れてしまいそうだ。
 原因不明ということが不安を最大限に加速する。

 

 悪阻みたいだとリヴァルにからかわれたのを思い出して更に気分が悪くなった。
 まさかそんなのあるはずがない。
 現実として有り得ない。

 

 そりゃあ確かにルルーシュは女だ。
 誰も咎めないことをいいことに男子の制服を着ているし、男女の区別をあまりしないアッシュフォード学園の方針により女と主張する機会も特になかったせいで大半の人間に男だと認識されようが紛れもなく女だ。
 少なくとも生物学的には。

 

 生物学的に女である限り妊娠という事象がありえるよう身体はつくってある。
 つくってはあるが、基本的に物事というのは過程があって結果がある。
 裏を返せば、過程がなければ結果はない。
 ルルーシュは誰かと抱き合ったことなどないのに何が妊娠か。

 最悪に下らない。

 だがそれはそれとして、最近の不調は事実だ。
 そろそろ病院に行くべきだろうか。
 最愛の弟であるロロにも最近心配されることが多い。
 今のところごまかしているがこのままの状態が続くのであれば隠し通すのは難しいだろう。

 


 さっさと病院に行って治してしまおう。
 だが今日はもう限界だ。

 

 

 ルルーシュは身体をベッドの上に投げ出して、しばらくの間思考を放棄することを決めた。
 とはいえ、それもロロが帰ってきてしまえば、いつもと同じ笑顔を浮かべて外に出た。 根性とはかくもすさまじいものか。

 

 

 























 

 


「は?」

 最近食べ物の匂いで吐き気がするんです。

 医者にそう告げると色々検査した結果、温厚そうな初老の医者がにこやかに笑ってくれた。

 

「おめでとう」

 

 体調が悪い人間に向かってなんだそれは、ふざけた医者だ。
 カルテを蹴り上げてやりたくなったが、だがそれは診察の結果を聞いたあとでも遅くはない。
 明日違う病院に行ってみようとこの時点ですでにそこまで決意してしまったルルーシュに、構うことなく医者は続けた。

 


「妊娠3ヶ月といったところかな」

 


 ぴし、と確かに聞こえたそれは世界が壊れる音で間違いない


 問診表ではなくアンケートと書かれた紙に何も考えずに自分が記入したことを思い出した。
 生理がきていない。○
 確かに3ヶ月ぐらいはきていない。
 だがルルーシュの周期はもともとかなり不順で、3ヶ月ぐらいならざらであれば今まで気にとめてこなかった――それはそれで問題ありとしてすみやかに婦人科へ行くべきだ――のだが。


 いや、そもそもおかしいだろう。
 繰り返すが、ルルーシュは処女だ。
 17という年齢からしてそうおかしいことじゃないだろう。
 性行為は結婚してからだなんてそこまで時代錯誤な感覚は持ってないが、好きでもない付き合ってもいない相手と関係を持つほど節操なしでもないし、もともと淡白でセックス自体にそこまで興味を抱いていなかった。


 その自分が、何故?いつ?どこで?

 

 

 更に言えばルルーシュが女であると認識している人間がどれだけいるというのか。
 例え何かの拍子に万が一にも気づいたとしてもだ、男口調に男装、可愛らしくもなければ色っぽくもないこんな自分に誰が興味を持つというのか。

 ルルーシュならごめんだ。
 周りの半分は女子だというのにわざわざそんなマニアックな人間を恋愛対象にするなんて。
 男女逆転祭では女だというのに普段とは違った格好をしなければ意味がないというミレイの言葉に押し切られドレスを着たが、まさかそんなものに血迷ったとかいうのか。

 


 ああ違うだろうルルーシュ・ランペルージ。
 正気にかえれ。

 

 だから!
 例え感情的な間違いがあったと仮定したとしても。
 今ここでの最大の問題は。

 

 

 父親が存在しないことだ。

 

 

 そんな馬鹿な。


 茫然としながらもものすごいスピードで思考を巡らせていたルルーシュは、医者の言葉をどこか遠いところで聞いた。

 

 


「じゃあこれもって産婦人科に行ってくれるかな」

 

 


 吐きそうだ。

 

 







 

 

 


 産婦人科の医師は女性で、内科に比べてかなり現実的だった。
 丁度ルルーシュの母親世代であるように見える彼女は真剣な顔でルルーシュに向き直ると、現実の厳しさを突きつけた。

 


「あなた、まだ17よね」
「はい」
「子供の父親と一緒に一度いらっしゃい」


 年齢と責任の所在の確認。
 それから、産む気があるのかと。

 


 もはやルルーシュの腹の中に今まで存在しなかったはずの命が一つ、おさまっていることは確定された。

 

 何人もの責任感のない少女たち――この場合は相手の男も入る――を診てきた女性医師にとってルルーシュもその中の一人だと認識されるのかと考えると絶望感が襲ってくる。

 それでも俯いていた顔を上げ、ルルーシュの中での真実を口にした。

 

 責任感のない少女の中でも、とりわけ最低の部類に区別されるのだろうその言葉を。

 

 

「父親は、…………わからないんです」

 


 改めて言葉にしてみると恐怖が倍増した。
 やはりルルーシュの認識と現実世界にズレが生じている。

 本当に父親が存在しない。
 つまりルルーシュは第二の聖母である。
 存在するが忘れている。
 いつのまにか記憶喪失に陥っている。
 知らないうちに。
 眠らされていたとかで?


 上のどれが真実だろう。
 どれが最も救いだろう。
 どれなら受け入れることができるだろうか。


 一つ目は論外だ。
 聖母などあってたまるものか。
 昔の宗教家にしてもそんな逸話を信じるほどルルーシュは神を信じていない。


 二つ目は比較対象が対象だが、一つ目よりはよっぽど現実的だ――この程度で現実的だとかその言葉に泣けた。
 少なくとも記憶喪失は事例として存在する。
 事故の前後の記憶が抜け落ちているというのはないことではないらしい。
 だが忘れるだなんてそんなにショックだったのか。
 大きな怪我をした覚えがなければ自然そういうことだろうが……。
 自分がたかがそんなことで記憶を封印してしまうほど弱い人間だっただなんて、そっちのほうがショックだ。


 三つ目。
 これも有り得ないと可能性をゼロにすることはできないにしても、限りなく低い。
 誰が何のために、で終わってしまう。

 


 真実はどこだろう。
 どこかに必ずあるはずだというのに、少しも届かなくて、シルエットさえも見えなくて。

 

 

「わからないというのは?  可能性のある人間は何人ぐらいいるの?」

 


 問われてもルルーシュにはふるふると力なく首を横にふるぐらいしかできなかった。

 


「少なくとも覚えている限り、性行為をしたことがありません」

 


 消え入りそうな声で医師の目を見ずにそう言ったルルーシュには、彼女がどう判断したのかわからなかった。
 ただ彼女は「そう」と静かに言ってため息をついた。

 

 厄介な案件と思われたのかもしれない。
 あるいは酒でも飲んで酔った上の醜態と思われたのかもしれない。


 どちらにしろ彼女が下した結論は妊娠しているでかわりようがなかったし、何にしろ決めるのがルルーシュだというのもうごかしようがないということだけが事実だった。

 


 よく考えなさいと言われた。

 


 自分のこと。

 

 子供のこと。

 

 

 

 未来のこと。 
 過去のこと。
 すべきこと。
 できること。

 

 


 それから。

 

 

 できないこと。

 


 いついつまでならおろせるからと、直接的ではなかったけれど、子供を殺せと言われたことに、言いようのない絶望感を覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

 















 暗い部屋で膝をかかえて考える。

 

 

 生まれて初めて何も考えたくないと思った。

 考えれば考えるほど辛くなっていく。


 自分の中に命があるという。
 突きつけられた事実はどこか現実味にかけていた。
 だって知らないのだ。
 命を扱う覚悟をしたこともなかった。
 この子は何者だ。
 この子は何だ。

 

 


 では自分は何だ。

 


 怖いと思った。
 全部が、この世界の全てが。
 信用できるものなど何一つないのだと。

 


 選択を迫る世界が憎かった。
 自分は何か、許されざる罪を犯したのだろうか。

 産むということはどういうことか。
 育てるということだ。
 責任をもつということだ。
 愛すると、いうことだ。

 

 おろすということはどういうことか。

 それはつまり、殺すということだ。
 逃げるていうことだ。
 放棄するということだ。


 選択しなければならない。
 これが夢ではないというならば。

 選択しなければならない。
 既に期限はきられた。

 

 


「おろす」

 忌避する言葉を口にだした瞬間、何かがルルーシュをおそった。
 それは衝動であるようでもあったし感情であるようにもあった。
 足元から這い上がるようにルルーシュを支配した。


 怖い。
 恐怖だ。

 けれどわからないことに対して感じていた先ほどまでのそれとは根本的にことなる。

 

 何が、がなかった。
 ただひたすらに純粋な恐怖に支配される。
 まるでそうあるようにプログラムされていたように。

 


「い、やだいやだいや、だいやだいやだいやだいやだ」

 


 いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ。

 
 ひたすら三文字がかけていく。

 駄目だ。
 それは駄目だ。

 何故かはわからない。
 でも駄目だ。
 おろしてはいけない。

 


 忠告なのか幻聴なのか。
 おろしたらダメだ。

 駄目だ、が根拠もなくルルーシュに浸透していく。
 逆らえばどうなるだろう。
 壊れてしまうのだろうか。


 けれどだったどうしろといえのか。
 産めと、いうのか。
 産んで育てろというのか。
 愛せというのか。

 

 寄生虫は宿主の行動を操ることがあるという。
 この腹に宿った何かがそうでない保障はどこかにあったろうか。
 中を全て食われ、腹をやぶってでてくるのは何か。

 

 

 

 


 震えは収まらない。

 

 


 






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【言い訳】(反転)
普通に考えたらこうなるだろ!とか阿呆なことを考えたのは、え、もしかして私だけですかorz 友人からはなんでそんな発想になるの的なことを言われましたが、実際こういう設定を見たことがないので自家発電しました。
どなたかが書いていらっしゃるのでしたら、是非とも教えていただきたいです。こそっと耳打ちしてやってください。おそらくそこのサイトさんにストーカー行為をハァハァ(´Д`*)(自重しろ)
この設定に関する苦情だけは受け付けません!!!何故なら妊婦するならこれ書くって決めてたから!(ならアンケート入れるなよ)
えーと、感想いただけたら舞って喜びます。アホなこと考えてんなや的なおしかりの言葉でも浦安の舞ぐらいは踊っときます。ではこんなところまで読んでくださってありがとうございました。ちゃんと6話になるか微妙です(ぼそっ)