注意:あいかわらず紫式部による源氏物語とは根本的に違います。と、いう注意書きをなくしたくて書いたはずだったのに……orz
夕顔編。光源氏=スザク、夕顔=ユーフェミア、六条御息所=ルルーシュの学園物。六条視点でおおくりします(この時点で原作レイプ)原作知らないって言う人は、えーっと、できれば知らないままでいてください(え)
ピンクのふわふわした髪にぱっちりした大きな瞳、うっすら頬を染めて小さな口を綻ばせる。
彼女の動作はいちいち優雅で、なのに気さくな性格ゆえに輪の中心になる。
ころころと可愛らしく笑う。
少し抜けている天然なところも彼女の魅力の一つだ。あの顔で少し困ったように首を傾げられたら女であるルルーシュでさえ手を差し伸べざるをえなくなってしまうのだから、男なんかいちころだ。
「完璧だな」
寮のルームメイトがどうでもよさそうに言い放った二文字に頷くほかない。
「ああ」
若干暗い声になってしまったのは、やはり同じ女だからだろう。
「は。なんだお前ユーフェミアが羨ましいのか」
図星を指されて、自覚していたことだがあらためて言葉にされると攻撃力が強くて泣きたくなった。
羨ましい。
そうだ。
羨ましくて。
「それとも妬ましいのか」
妬ましい。
くっくとベッドに寝そべったままのC.C.が笑う。
彼女ぐらいのものだ。
ユーフェミア・リ・ブリタニアをなんのためらいもなくこき下ろすのは。
いや。中傷とはまた少し違う。
彼女には相手を傷つけようだとか、悪く言っているつもりなどなく、ただ彼女の中での事実を述べているだけなのだから。
正当な評価と本人は言っているが、そこまではどうだろう。
基本的に自分への評価が正当でなければ、上から目線の評価はかなり偉そうな物言いになっているし。
言っていることの方向的には間違っていないのだろうが。
「あれに比べてお前は素直じゃないからな」
同級生をあれよばわりしている時点で正当でないと思う。
素直じゃない。
その通りだ。
でも例え素直になってみたとしてユーフェミアに勝てるとは思えない――勝つ負けるのレベルで話をしてしまう時点で惨敗が決定している。
柔らかさのない直線の髪はそっけなく短く切られているし、目つきはきつい。
口を開けば皮肉しか言わないし、同じ制服のはずなのにユーフェミアのように可愛らしく着こなせない。
スカートからでる足は肉付きが悪く棒みたいだ。シャーリーなんかが細くて長くて羨ましいと辛うじて世辞を言ってはくれるが、細ければいいというものでもないし高い身長はコンプレックスに他ならない。
これで頼み事の一つでもしてみればまだ可愛げもあるだろうが、元来の完璧主義とプライドの高さが邪魔して下手にでるなんていうのはやり方すらわからない始末だ――この点に関してはC.C.と同類だ。
だいたい自分でやって出来ないことなどそうそうないし、できないことに手をつけたりなどしない。他人がやるより自分でやったほうが確かだし質の保障もできるとなればあえて頼み事をしなければならない状況というのが珍しい。人生はどうにかなる、ではなく、どうにかするものだ。
ぼそぼそと自分の欠点をあげつらうルルーシュに、C.C.が心底鬱陶しげな視線を向ける。
「お前は本当に馬鹿だな」
どうしてそんなにと不思議になるほど自分に自信のある女にはわからない悩みだ。
確かに彼女の顔は悪くないが、性格が最悪ではないか。
みな敬遠している。
ただでさえ近づきがたいと思われているらしいルルーシュなのにC.C.と一緒にいるこ
とでおそらく拍車をかけてしまっているのだろうが、寮の部屋割りは自分の意志ではどうしようもないではないか。
ああ相談する相手を間違えた――実際は相談したわけではなく部屋の隅で鬱になっていたルルーシュにC.C.のほうが勝手にペラペラ話し出しただけだ。
「私はお前の顔の方が好きだぞ。ユーフェミアみたいに愛想を振りまかれても何の面白みもないしな。お前みたいな高いプライドこそ攻略しがいがあるというものだ」
慰められているのだろうか。
ナノ単位で嬉しくない。
だいたい硬質な美貌ほど苦痛に歪ませたくなるだとか、美貌のくだりは完全否定するがそれはつまり、お高くとまってる奴にちょっとは苦しめばいいと言っているだけではないか。
プライドの話にしても趣味が悪いの一言につきる。
ふるふると力なく首を振るルルーシュをみやって彼女は呆れたように鼻をならした。
「ふん。何がだ。結局お前はユーフェミアに枢木をとられたのが気に食わないだけだろう」
枢木――枢木スザク。
唐突にでてきた名前に思わず肩が跳ねた。
スザクは、ルルーシュの恋人……であるはずだが、最近ちょっとどころでなく自信がなくなってしまった。
きっと彼も懐かないルルーシュにそろそろ嫌気がさしてきたのだろう。
この間2人で出かけたのは何時だったかと考えて、涙がでそうになった。
奥歯をかみしめて耐えた。
かれこれ1ヶ月は経過している。
これはもう完全に自然消滅というやつではなかろうか。
教室でもスザクとユーフェミアが一緒に楽しそうに話しているのを最近よく見かける。
スザクは、ルルーシュにはあんな顔しないではないか。
ルルーシュといる時のスザクは、機嫌の悪いルルーシュを伺っているような顔だったり、無茶な要求をつきつけたルルーシュに苦笑いで応じたり、心配したりたまにため息をついたりそれから、……………なんだ全部ルルーシュのせいだ。
二人の間に共通の話題はあまりない。
彼女とどんな話をしているのだろうかと気になって仕方がなかった。
もともとスザクから告白してきたのだ。
クラスの男子が自分のことを敬遠していることは知っていたから、とにかく驚いた。
罰ゲームなんじゃないかとも疑ったのだが、あまりに真剣に言うものだから、もし本当だったら失礼だと思って、真剣に断っている自分が後で笑われるかもしれないが、こんな女に断られる彼のほうが嫌な気持ちだろうから本当に申し訳ないなと思いながら頭を下げた。
けれどスザクはどうやら信じられないことに本気だったらしく、あまりに諦めの悪い彼に折れるような形で付き合い始めた。
付き合い始めてみれば惹かれるのは、堕ちるのは早かった――自意識過剰ともいえるが、とにかくチャンスをくれと食い下がっただけはある。全く持って悔しいことに。
穏やかで人当たりがよく、大事にしてくれたし、ふわふわの髪が好きだった。そういうと「そこなの?」と微妙に複雑そうな顔をされたものだが、外も中も、パーツの一つ一つが好きなのだと、そこまで伝わっていたかどうかはわからない。
勉強はあまり得意ではないようだが、運動神経は抜群で、勉強なんか出来なくてもうまく生きていくだろうから全く問題はない。勉強ぐらいしか取り柄のないルルーシュにとってはむしろ羨ましくて仕方なかったし、そんな彼が自分の恋人だというのは優越感をくすぐった――自分のことではないのに愚かなことだ。
これで父親が政治家とくれば引く手数多なスザクが、何故ルルーシュだったのかルルーシュには理解できなかった。自分になびかない女が物珍しかったのだろうか。それを言うならC.C.にはしってもいい気がするのだが。なびかないどころか新しい境地が開けるだろう――何とは言わないが。
けれど酷い。
すぐに飽きて捨ててしまうのなら、何で好きにさせたのだろう。
気持ちが傾いたから興味がなくなってしまったのだろうか。
本当に酷い。
なのに好きだなんて、いつからこんな自虐的でネガティブな人間になってしまったんだろう。
「お前はもとから自虐的でネガティブな人間だと思うがな」
「うるさい」
「自己憐憫に浸りたいだけだろうが」
「浸りたくて浸ってるんだからほっとけ」
ああ本当にひどい。
別れ話を切り出されたくないがために必死に避けてる自分は本当に、ひどく、醜い。
「楽になる方法を教えてやろうか」
悪魔がささやいた。
「いくつかあるぞ。一つ。ふる」
「C.C.!」
「一番おすすめだ。すっぱり切れてさわやかになる」
主に私と部屋の空気が、と嘯く彼女はそういえばスザクが嫌いなのか。
最初からやけに反対していた。
これはなかなか珍しいことだ。物事は経験だといって崖の上からといわず飛行機の上からでも突き落としかねない彼女が止めるだなんて。しかもあの男だけはという限定で。たちが悪すぎるお前の手には余るという言葉が最初は理解できなかったが、最近ようやくわかってきた。悔しいことにC.C.の目は確かだ。
「二つ。ユーフェミアをさっさと排除する。物理的にでも構わんが、転校でも留学でもさせてしまえ」
できるだろうと言われて、一瞬本気で検討してしまいそうになった自分を殺してしまいたいほど嫌悪した。
出来るだろう。
大嫌いな父親の権力を使えば。
だがそんな卑怯な手を使う人間だと思っているのか。
きっとにらみつけると彼女は木のない様子で手をふった。
「方法の一つとしてあげただけだろ。誰もやれとは言ってない。が、お前のそれはただの甘さだな。欲しいものがある時にしり込みしてては何も手に入れられないぞ。ようは、バレなければいい。だろう?」
「ふざけるな」
全面的に反対するわけではないが、ルルーシュにだってポリシーはある。
踏み込めない一線というものが――あの男に頭を下げるくらいだったらスザクを監禁したほうがよっぽどマシだ。
「……いっそそれでいいんじゃないかと思うがな」
「何だ?」
「いや。なんでもない。3つめだ。姉にでも垂れ込んでやれ」
「姉?」
「ユーフェミア・リ・ブリタニアには妹至上主義の姉がいる。知らないのか?」
知らない。
というかたかがクラスメイトで親しいわけでもない人間の情報を何故そこまで握っている。
「枢木スザクは最も嫌いなタイプだろうから、きっと引き離してくれるぞ」
何様のつもりかと言いたくなる手段だが、どうだろう。
一考の余地はあるか。
ああだが、そんなことをすればユーフェミアに嫌われてしまうかもしれない。
ユーフェミアは数少ない友達の一人なのに。
人見知りするルルーシュに声をかけてくれた……。
たまにあまりの天然ぶりについていけなくなることもあるけれど。
でも好きだ。
好きなのに、汚いことばかり考えてしまう自分がいる。
スザクと放している姿を見ると、あふれてくるがとめられない。
――――とらないで。
いなくなってしまえばいいのに。
考えた。
瞬時に何通りもの方法を。
そんなに自分が汚くて汚くて大嫌いで………、大嫌いだ。
こんなものが腹の奥底にたまっているだなんて知らなかった。知りたくなかった。切って洗い流してしまいたい。
なのにあの二人が、つきつけてくるのだ。
こんな汚い自分を教えた彼女を、そうだルルーシュはのろったのだ。
冷静になって青ざめた。
なんてことを考えてしまったのだろうと。
あんなに綺麗な彼女に対して。
大嫌いなのが苦しいのだと言うルルーシュにC.C.が意味不明なことを続ける。
「あいつにとっても本望だろう」
「あいつって、スザクか?」
「馬鹿か。ユーフェミアに決まっている」
「お前の思考回路は理解しがたいのだが」
「察しの悪い奴め。ああ、もうお前はわからなくていい」
「だからどういうことだ」
与えられている情報が少なすぎるのに、これはいかがなものか。
不親切な彼女に多少むっとする。
そりゃあルルーシュが簡単に人づてに聞いていいものではないのかもしれないが。
「あのなあ、お前が考えているよりずっと、あの女は、女だぞ?」
「は? そりゃ女だろう」
可愛らしい女の子だ。
ルルーシュなんかよりずっとずっと。
「そういう意味じゃなくてだな。ルルーシュ、私はお前が心の底から心配だよ。お前は完全に淘汰されるタイプだ。遺伝子の保存ってわかるか? 人間はお前の言う汚い手段を使って子をなしてきたのさ。ユーフェミアみたいなタイプの女が生き残るんだ。自分に甘く、卑怯なことを正当化してしまえる強かさをもつ女がな。だか女なんてみんなそんなものさ。だいたい考えても見ろ」
あの女は知っていたはずだ、と。
「あの男が他人の物であることをな」
大きく目を見開いたルルーシュの髪を彼女がいとおしげに梳いた。
「他人の物であることを理解した上で、利用した」
「利用?」
「利用だよ。あそこに恋愛感情はないぞ、知らなかったか? 本命が別にいるくせに人のものに手をだしてきた、と言っているんだ。
「ほん、めい」
「本人はかなわぬ思いに別のはけ口を見つけたか、あるいは気を引きたかっただけか。姉だよ姉。あれもなかなか難儀なことをしてるな」
だが、だからと言って、理由があったからといって。
事実はかわらない。
「友達としての価値もない、泥棒だ」
さらにはスザクまでも利用して。
ああ。
苦しめばいいのに。
「そういえば一つ、思い出した。ユーフェミアが今日階段から落ちたらしい。ベタだが、突き落とされただとか。犯人は不明だし、ただの噂話だがな」
耐え切れなくなって、部屋を飛び出した。
呪ったからだろうか。
ルルーシュの、せいだろうか。
やっていないと理性は告げる。
ルルーシュのせいじゃない。
物理的にありえない。
だが、願わなかったか。
望まなかったか。
一度も、考えなかったか?
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【言い訳】(反転)
良心の呵責に耐えかねて、夕顔のあらすじ:市井で暮らす夕顔と光源氏のお互い身分を隠しての不倫話。夕顔は実は源氏の友人の妻。夕顔は夜中に女性の霊に呪い殺されますが、これが六条御息所じゃないかと……。六条は源氏の一番最初の恋人で、あまりにも完璧な人だったためにもてあまされちゃいます。しかもプライド高くて甘えることもできない人です。
しかしながらこのまま書いていくと、ルルーシュが完璧に捨てられてしまうため、断念しました(早く気づけ)フォローとして黒るぎさんの意地悪説も書いてたんですが、完璧に夕顔じゃなくなるのでやめました。
結局どこも源氏になってなくて申し訳ないですm(_ _)m
それでも娯楽として楽しんでいただければ、と。あと夕顔のあらすじはwikiか何かで調べていただいたほうが確実です。
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