どんなに。 どんなに切望しても。 君は僕のものにはなってくれないんだね。 悲しみではなかった。 それすらも十の昔に通り過ぎて。 絶望だった。 なんでだろうと思う。 吸い上げて、噛み付いて。 足りなくて喰らいついて。 笑いたくなるぐらい飢えた自分。 けれどまさか今さらそんなことを不思議に思ったりはしない。 なんでこんなに乾いているのだろうだんてそんなわかりきったこと。 だって足りないのだ。 絶望的に足りない。 なのに欲求は大きくなる一方で。 少しだって満たされないのに膨脹していくそれに、飢えと乾きにどうにかなってしまいそうだ。 否。 もうすでにどうにかなってしまっているのだろう。 ああ、とうとう皮膚が裂けて赤い雫がこぼれた。 でも。 まだ足りない。 病的な自分。 でも彼が悪いのだ。 「ルルーシュ」 呼んでも緩慢な返事しかかえってこない彼はすでに半分夢の中に足を突っ込んでいるから。 細い体を抱きしめる。 愛おしさゆえにというよりは、拘束具代わりとでも言ったほうがいいのかもしれない。 手元に手錠がないから腕で代わりを。 取りに行く時間すら彼を自由にさせたくなくて足で代わりを。 折れそうなほど強く。 いっそ折れてしまえばいいと思いながら。 そしたら動けないだろう。 どんなに嫌でも、腕の中から抜け出せないだろう。 粉々に砕いてしまえば。 一歩も動けなくなってしまえばいいのに。 彼は本当に人間なのだろうか。 自分でつけた痕を凝視しながら、彼が聞いたら失礼だと怒りそうなことを真剣に考える。 痕を指でなぞる。 滑らかな肌。 指で触っただけでは痕の存在はわからない。 当たり前だ。 内出血なのだから。 物理的にそれが普通。 何度も何度も確かめるようになぞる。 本当にここにあるのだろうかと疑いながら。 「ルルーシュ。何で」 何でこの痕は消えてしまうのだろうか。 明日の朝、この所有の証は所有を否定するかのように消えうせていることだろう。 これは何度かの経験で学んだことだ。 人間だろうかと真剣に考える理由はここにある。 異様に怪我の治りの早い身体。 キスマークは内出血だ。 それとて例外ではなく簡単に直ってしまう。 スザクの思いを具現化するそれは、簡単に全てを否定するかのように、そんな事実などもともとなかったかのように消えうせる。 消えたら付け直せばいい? 一体一日に何度つけろと言うのか。 そんなに否定したいのか。 なんで。 「ルルーシュ。何で君は……」 僕のものになってくれないの。 何で否定するの。 何でここにいてくれないの。 傍にいて。 一人にしないで。 君が欲しいのに。 君しかいらないのにっ。 何で他でもない君が、拒絶する。 Next |