「アスラン、うさぎさんはね、寂しいと死んじゃうんだって」 変なことを思いだしてしまった。 まるで脈絡もなく。 あれはいくつぐらいの話だったか。 随分と昔の話に思える。 うさぎのぬいぐるみを抱えながらしたり顔でそんなことを言った年上だと主張するくせに精神年齢の低い幼馴染に、そういえばなんと返したのだったか。 「うさぎさんは寂しいと死んじゃうんだよ」 「へー」 「あ、信じてないな」 こんな感じだっただろうか。 それとも、 「それ嘘だから」 「え……………………、なんで!?」 「いや、なんでって言われても」 こんな感じだっただろうか。 覚えてないくせに自分が言うであろう夢のない台詞を思い浮かべれば、どんな反応が返ってくるか自然に頭の中で声がして、そうとう重症だなとアスランはため息をついた。 「どうかしましたか?」 最近知り合った一つ年下の少年が心配そうに覗き込んできた。 なんでもないよと返したのはほとんど条件反射のようなものだったが、そんなにあからさまに物憂げな顔をしていたのだと指摘されて、年下に心配されてしまったということもあわせて少々落ち込んだ。 「ちょっと考え事をしてただけだから」 「そうですか? ならいいんですけど」 「アースーラーン」 ところで、と続けようとしたニコルの声は、アスランの耳元で存在を主張した能天気な声にかき消されてアスランには届かなかった。 「うわぁっ」 突然肩にかかった重みにアスランの身体が傾く。 なんとか意地で無様に二人で山をつくる事態は回避したが、思わず出てしまった声に注目を集めてしまうのは止められなかった。 「キ…………」 キラ、危ないだろ。 でかかった言葉を慌てて飲み込む。 キラなわけがない。 ここにキラはいない。 アスランにこんなことを仕掛けるのはキラばかりだと思っていたのだが。 変われば変わるものだ。 世界は広い。 ただ、知らなかっただけで。 「……ラスティ」 「よっ。何ぼけっとしてんだよ。次、遅れるぞ? イザークにおいていかれる」 「貴様等を待ってなどいないっ!」 耳に響く声で抗議が入るが、からかわれているだけなのだとイザークはわかっているのかいないのか。 律儀な奴だなと他人事のように思った。 「えー。仲良くみんなで行こうぜー」 「気持ちの悪いことを言うな! 行くぞ、ディアッカ」 「あーへいへい」 「でも従者は連れていく、と。我が侭な女王様だねー」 「ラスティ。あんまり言うとうるさいですよ?」 いつのまにか周りはとても賑やかで。 それはとてもよくわかっているはずなのに。 どうしてだろう。 こんなにも寂しいのは。 寂しくて、死んでしまいそうだ。 「で、だからな〜にをぼーっとしてんだかね、お姫様は」 「誰が姫だ」 「あ、そこは聞いてんだ」 いつからうさぎなんかになってしまったのだろう。 「何を考えてたんですか?」 心にぽっかり穴があいてる。 足りない。 寂しい。 「なんでうさぎなんだろう、とか」 「……………………はい?」 「アスランお前……、意外と不思議の世界の住人だったんだな」 「は?」 しみじみとした口調で、どこか感慨深げに言われて初めてアスランは自分が何を言ったのか自覚した。 「いやだから違うんだ、そうじゃない。昔うさぎは寂しいと死ぬとか聞いたことがあったが、実際はそんなことはないわけで」 「今度からアリスって呼ぼうぜ」 慌てて言いつくろってみたりなどするが、聞く耳などもつはずもなく、いいネタができたとばかりににやにやと笑われる。 「じゃあなんでそんな迷信が出来上がったのか、とか。他の動物でもいいんじゃないかとか」 「アリス、ウサギ追いかけてっちゃ駄目だぜ?」 穴から落ちるから、と言われてアスランは再びため息をつく羽目になった。 こうなったら何を言っても無駄だろう。 過剰反応したほうが馬鹿をみる。 更になんだかんだと言ってくるラスティを視界から追い出して、アスランは席をたった。 「ニコル、行こうか」 「そうですね」 「っておい、置いていくなよ!」 賑やかだ。 でも足りない。 寂しくて。 心の穴に落ちていくんだ。 墜落死は途中で気を失うから痛くないとか聞いたことがあるが、どうだろう。 戯言。 変な妄想しましたorz アスランがアリスでキラがウサギ(なんか切羽詰ってる感が)、イザークはもちろんハートのクイーンで、ディアッカはフラミンゴのゴルフクラブ(爆笑)ラスティがいかれ帽子屋でラクスがチェシャ猫です。で、ニコルがお姉さん(死) メインはもちろんアリス(アスラン)がウサギ(キラ)を一生懸命追いかけていくところにあると思います(待て) |