ひら、ひらと目の前で揺れるリボンの端を見ていたらなんだかだんだんと催眠術にでもかかっている気分になってきた。
 細い腰が忙しそうにあちらこちら動くのにあわせひらりひらり動くエプロンのリボン。

 誘われているように感じるのはきっと気のせいで。
 でもさっきから手を伸ばしだい衝動が膨れあがって、もう抑えきれる自信がなくなってきてしまったのだがどうしよう。


 手際良く夕飯の準備をするルルーシュはそんなスザクの視線になど気づいていないのだろう。


「ルルーシュー」

 そっと呼んでみた。
 ルルーシュは全く気づく様子なく手を動かしている。


 水回りというところは得てして声が届きにくい所であるし、気がつかなかったところで普段であれば大して気にしなかっただろうに、スザクは気がつかないほうが悪いのだと嘯いてルルーシュの背に手を伸ばした。












kitchen party















「ほあ!?」





 突然横腹を両手でつかまれて、反射的に身をすくませると、同時に変な声が出てしまった。




 包丁は落とさなかったものの、よくよく考えるまでもなく危険な状態だったことは誰の目にも明白で文句を言わなければとふりかえると、きょとんとした翡翠に見つめられていた。
 それが、なんとも表記しづらい悲鳴に対してだと気づけば、顔に血が上った。
 恥ずかしさとそれから怒りがふつふつとわきあがってくるのに、ものの数秒もかからなかった――あるいは恥ずかしさ故の怒りと言うべきか。



「おま、おま、お前が急に変なところ触るからっ」



 だいたい料理をしている人間の腰をつかむなんて驚くにきまっているではないか。

 悪いのはスザクだ。
 スザクが悪い。


「暇になるにきまってるんだから料理ができる頃に来いって言っただろ!? 暇なら寝てろ! ちょっかいだすんじゃない!!」
「刃物ふりまわすと危ないよ」
「黙れっ! 危ないのはお前だバカ。おれが包丁を落としてたらどうするんだ」
「取る」


 短い答えは残念ながらしばらく意味がわからなかった。


「キャッチする。大丈夫。ルルーシュにけがはさせないよ」


 くらっとしたのはにっこり笑ったアホ犬が可愛く見えてしまったからではない。
 断じて、ない。
 あくまでアホ犬のあまりのアホさ加減にめまいがしただけだ。

 どうしてこいつはこうなんだろう。

 一見物腰穏やかに見えて、その実頑固で。
 天然ボケでKYで。
 バカで。







 でも可愛いんだ。
 なんてたちの悪い。







 なんというか、気分がそがれて溜息とともに包丁を置いた。



「もうすぐできるから。おとなしくしてろ。な?」
「飽きたよ、ルルーシュ」
「だからもうすぐできるからそれまで」
「そんなに我慢できないよ。すぐ食べたい。今食べたい」


 後ろからシンクに押し付けられるように迫られる体勢に不安になる。
 餓えたそれはどこか獣くさく、その表情をルルーシュは確かに知っていた。



 知っていた。が、いや気のせいだろう。
 今は食事の話しかしていない。



「ねえルルーシュ食べたい」


 はたして今、ルルーシュと食べたいの間に句読点はあっただろうか。


「お前が和食がいいというから作ってるんだろ」
「君がいい」



 聞いちゃいない。
 しかも嫌な予感ほどよくあたる。



「ルルーシュ」


 くるりと反転させられ、気づけば朱雀の腕の中にいることにひどく焦る。

 ルルーシュを見据えるその目は獲物を求める獣のものだ。
 ぞくりとしたものが背を走るのは動物的な恐怖か。
 あるいは身体にうえつけられた快楽への期待か。


 唇に息がかかった。



「スザク! 本当に、待て。今はだめだ。わかるだろ? 夜だ、夜つきあってやるから」
「うん。でも、今、欲しんだ」


 なんとか振りほどこうとするが、つかまれた手は動かすことすらできなかった。
 いまいましい馬鹿力が。



「だってルルーシュ。ルルーシュが悪いんだよ。エプロンがひらひらってなってるんだよ!?」


 正直意味がわからない。


「駄目かな?」


 言い方がいくら殊勝でも、本質までそうとは限らない。そんなことは嫌というほど知っていたし、今回に限って言えば、それが滲みでてしまっている。


「駄目だ」


 ここで引いてしまっては、いけないとどうにか力をいれてつっぱると、スザクの笑みが消えた。




「そっか。残念だな」



 頭の中で警告音が鳴る。
 手首をつかむ力が強くなった。


「じゃあ仕方ないよね」
「スザク!」

 何が、と問う暇はない。
 そもそもそんな言葉、叫んでみたところで効果などない。



 両手を背中にまわされて、そのまま唇を奪われた。





「ん…………ぅ」


 鼻にかかった声がこぼれる。


「すざ……っぅ……」


 どうしようもない恥ずかしさと料理中ということに抗議しようと名を呼べば、開いた唇が好都合とばかりにしたを差し入れられた。
 からめとられ、吸われ、好きかって蹂躙していくそれに翻弄され、噛んででやろうかと考えていた思考が実行に移す前にどんどん白く濁っていってしまう。





「ンンッ…………ふぁ」


 ずんっと腰が重くなり、足から力が抜けた。
 だが崩れ落ちることはなく、そこではじめて腰にまわった腕に気がついた。
 力が抜けた身体は引き寄せられれば抵抗できず、膝をわられ、身体が密着する。


 本気でやるつもりなのか。
 いや、最初からやる気しかなかったけども。
 でもこんなところで。
 こんな時間から。



 スザクの思い通りになるのは癪だ。
 そうは思うがしかし煽るような舌の動きに、慣らされた身体はすでに熱を持ち出していた。



 片手で拘束されている両手をぐいとしたにひかれ、強制的に顎が上にあがる。
 何をしようとしているのか、経験からわかってしまい逃げるように身体を捻ると、力の入らない膝がかくりと落ちて、体重を完全にスザクに支えられる形になった。
 更に悪い。
 最悪だ。


 拒もうとしてももはや遅く、スザクは閉じることを許さず口腔内に唾液を送りこんできた。

「んっ」


 飲まなければ窒息する。
 殺す気か。
 ふざけるな。
 ただでさえすでに息があがっているというのに。
 悪態もすべて言葉にはできない。



 こういうのは、屈伏するようで、好きじゃないのに。
 否。
 むしろだからこそスザクは好むのだろう。



 だが吐き出そうにも唇はふさがれたまま。
 大した抵抗もできなければ飲む以外に選択肢はない。
 さすがにこんなふざけた死に方はごめんだ。


 今日の夕食には鷹の目を大量に入れてやる。スザクの分だけ。
 そう心に決めて、まぶたをぎゅっと瞑ったまま、ルルーシュはこくりと喉を動かした。



「いい子だね」
「ふ、ざけっ」


 スザクは息のあがったルルーシュの様子を楽しげに眺め、濡れた唇を親指でぬぐった。


「手を、はなせ、この馬鹿」
「そうだね。確かに僕も手が一つ使えないのはやりにくい」


 
 飄々とのたまう言葉に次元的な隔たりを感じた。
 絶望に似ていた。

 絶対に殴ってやる。
 そんな物騒な決意を秘めた視線の意味に気付いたのか――いや、おそらく最初からそのつもりだっただけだろう。
 スザクはシンクの下にかかっていたタオルで、ルルーシュの両手首を後ろと手のまま縛り上げてしまった。


「や、やめろ!」


 目を白黒させるルルーシュにスザクは満足げに頷いた。
 やけに手際が良い。縛る技術が向上する経験ってなんだろう。…………考えすぎだろうか。


「スザク、おまえ!」
「ルルーシュ、そういう目はルルーシュの場合墓穴を掘るだけだよ? すごくゾクゾクする。ルルーシュだってほら、キスだけで勃ってるじゃないか」


「なっ、ぁ………ぁ」


 きゅっと服の上から胸の突起を摘まれ、抗議の声が途切れる。
 やわやわと服の上から遊ばれ、布が擦れて焦れったい感覚に襲われた。


「こっちも勃ってきた。相変わらず感度いいね。ここだけでイってみる?」


 捻るように潰されて、痛みに喉がひきっった。




「った、いた、い、やめっ」
「ルルーシュは痛いの好きでしょ? 知ってるんだよ。優しくされるより少し乱暴なほうが感度がいいことも」



 マゾ、と耳元で吹き込まれ、腰が揺れた。
 

 違う。
 そうじゃない。
 今のは、違う。
 感じたんじゃない。



 必死で首をふる。



「ウソは駄目。ほら見て?」



 ズボンの前をくつろげられて、既に勃ちあがった中心をなで上げられた。



「ひっ……ス、スザク! せめてベッドで!」
「うん? あとでね。君もう歩けないだろ?」


 普段ならば担いでも連れて行くからこれは何が何でもここでという意思表示に違いない。
 こういう時のスザクは本当に意地が悪い。



「ほら、もうこんなにぬるぬるだよ」



 鈴口をスザクの手がなでた。


「ふ、ぁ………」
「いい声」


 尻をさらけだすためだけに下げられたズボンと下着は太ももでひっかかり、動きを拘束する。

 感触を楽しむように尻たぶをもちながら、スザクの視線がキッチンをさ迷った。


「スザク?」
「ねえルルーシュ、せっかくだからあれ、使ってみよう」




 語尾が跳ねたことに嫌な予感しか覚えず、必死に首をふったが既にスザクはルルーシュを見ていなかった。
 スザクが立ち上がり、支えがなくなって身体はずるずると崩れ落ちた。


「スザク! 変なものをつかってみろ、許さないからな」
「変なものじゃないよ」




 絶対に信用できないと顔を上げて、スザクが手に持ったものを認めて、ルルーシュはさっと青くなった。





「おまえ、それっ」


 声が震える。
 先程までルルーシュがそこに立っていたのだ。
 何かと言われてわからないはずはない。


 まな板の上に確かにあったはずのそれが、信じたくないことにスザクの手の中にあった。 
 瞬きをしてみても、やっぱりあった。



「そう、長芋」


 どう使うか、あえて尋ねてみるべきだろうか。
 今日はとろろにしようと思っていたのに………。

 どう使うかなど知りたくはない。
 だがスザクの横暴を許せば今日はもうとろろが食べられないことだけはわかる――もうすでに食べたくなくなってきた。



 しかも丁度剥き終わってから襲ってくるなんて………。最初から狙っていたと――いやさすがにそれはないと信じたい。そんな恋人など認められない。

 逃げようにも足にズボンが絡まって、焦れば焦るほど立ち上がれずに転がってしまう。
 ずるずると後退するが、そんな逃げ方は意味すらない。
 すぐに背中に壁にぶつかった。



「スザク、嫌だ」
「大丈夫だよ」
「い、嫌だ、くるな!」
「我が儘言わないで。ほらこっち」


 手を引っ張られ、ルルーシュはフローリングに転がりうつぶせにされた。




「いやだ、本当に許さないからなっ! スザク! 長芋って高いんだぞ!」
「え? そこ?」



 腰だけ高く上げる姿勢で固定され、強制的に恥ずかしいところまでさらけだされた。どうにか体勢を立て直そうと思っても後ろ手で縛られている状態では自分の体重を支えられない。


「ひゃぁっ」


 ぬるりとした感触に身体を震わす。
 わぜとだ。
 絶対にわざだ。
 わざと、大きく水音を響かせているに違いない。
 ルルーシュの羞恥心をあおるために。

 蕾の襞を舌で遊ばれる自分にはどうしようもない危うい感覚に反応してしまうのは、脊髄反射だというのに。


「いやだ、バカ、やめろって言っあ、やあぁ」
「嘘ばっかり。ルルーシュはここ、舐めてもらうの大好きだろ。ひくひくいってる。可愛い」
「そんな、わけ、あ、あ、…………んんっ」



 ぬるっと大した抵抗もなく舌を押し入れたスザクが喉の奥で笑うのがわかった。


「それとも慣らさずそのまま突っ込んで欲しいってこと? ああでも、長芋ぬるぬるしてるし入るかも」
「ばっ………」


 いいよと言ってくるスザクはルルーシュの言葉など聞く気がないのだろう。
 前触れなくぐっと押しつけられたものに息が止まった。


「っぅう………ぁ、は」



 そんなに太いものではない――自分で剥いた長芋だ。わかるがだからといって何の助けになるだろう。

 スザクが等閑に慣らしたためというよりは長芋のぬめりをかり、ゆっくりと開かれていく。
 食べ物を本来だすはずのところへ入れられるというのはひどく倒錯的で屈辱的だった。
 端から見ればどれだけ滑稽な格好をしているだろう。
 それを思えば涙すらこぼれるというのに、息を見出して諾々と受け入れる己が惨めだ。



「気持ち良さそうだね」


「あ……ん……ぁああ、すざ……ぅあ」


 体内に異物を押し入れられ回され、たまに引き戻されて、抗議はすべてあえぎ声に変わった。




「あ」


 そんな不吉な言葉が聞こえると同時に先端がぐっと奥の深くを抉った。


「ぁあああ!」

 びくっとルルーシュの身体が震え、甲高い悲鳴があがる。


「ああごめんルルーシュ。手が滑っちゃった」
「ば、か、このっ」
「うんごめんね」

 全く悪いと思っていないだろうにぬけぬけと謝ってみせるスザクはそろそろいいかなと呟いた。
 何がと尋ねずとも、それが何を指しているのかルルーシュにもわかった。

 下衆だ。
 この男は本当に下衆だ。

 奥から沸き上がってくる疼きの正体など考えるまでもない。



「抜くからじっとしててね。滑っちゃって持ちにくいんだこれ」

 そんなむちゃまで言う。


 長芋が触れたところがそろそろ熱を持ち、ルルーシュの最後の自制心を焼ききろうとしているのを感じる。
 きゅっと手に力を入れるが、我慢のきかない疼きがルルーシュの腰を揺らす。


「っ……スザクっ」
「ん?」
「なんか中が」


 痒い。



「へん、だ………ぁ、や」


 痒くてかきむしってしまいたい衝動。
 何かを、こすりつけて。

「も、いやだ」


 ゆっくりと引き抜かれていく硬い感触。
 滑る粘液は求める強さをもたずもどかしくて仕方がない。


「力抜いて。そんなにきゅうきゅう締め付けたら抜けないよ。それとも抜きたくないのかな」
「かゆい! スザク! かゆいっ!」


 おかしくなってしまう。
 恐怖に涙がこぼれた。
 だがその心とは反対に身体はただただ擦られることだけを望む。


「か、かゆいかゆいかゆい! おねがっスザク! 助け…………ぅあ、あああ」


 何度か滑った風を装って入り口までひきだしては奥まで差し入れられるのを繰り返され、ようやく抜いてもらえた時にはルルーシュの思考はもはやまともには成立せず、追いつめるような痒みの中でしゃくりあげるように喘ぐだけだった。
 だが抜いたからといってその痒みが消えるわけではない。


 ルルーシュの身体を抱き起こし前から抱えるようにしてスザクは軽く口付けた。


「痒い? ルルーシュ。ピンクだったのに真っ赤になってる。すごい卑猥。ルルーシュにも見せてあげたいな」
「かゆ、い、かゆいんだスザク。助けて」


 何でもいい。
 この苦しみから解放してくれるのなら何でもいい。
 さんざんに擦って欲しい。
 もはや頭の中にはこの文字しかなかった。



「そっかじゃあルルーシュにいいものをあげる」
「あ?」


 言葉と共にぐっと押し込まれたそれにルルーシュは背を仰け反らせた。


「あ、っばか」
「ルルーシュ、これ何かわかる?」



 わからない。
 長芋ではない。
 スザクのものでもない。
 わかるのはごつごつとした硬い感触が粘膜を擦るその一瞬だけ満たされるということ。


「なんだ? こ、れ」
「きゅうり。いぼが気持ちいいでしょ」


 またもや食べ物。
 本来身体の栄養とすべきものをつかって追う快感。
 冒涜感に後ろをきゅっと締め上げてしまえばよりいっそうその凹凸を感じることになり吐息がこぼれた。


「おいしそうだね、ルルーシュ。ゆっくり味わって」


 そう言ってスザクはルルーシュの額にキスを一つおとすと、ルルーシュを床に下ろした。


「僕ちょっと買い忘れてたものに気付いたから買いにいってくるけど、きゅうりもあるからルルーシュ寂しくないよね?」


 立ち上がって見下ろされ、でてきた言葉は理解ができなかった。


「スザク?」


「手は縛ったままだけど届くから問題ないよね?」


「まっ」



 手をのばそうとして改めて縛られていることを自覚した。
 絶望と焦燥にどうにか動こうとするも、芋虫のような格好にしかならない。


「待ってくれスザク!」



 ルルーシュの叫び声に、スザクはひらりと手をふった。






















 呆然とスザクを見送ったルルーシュは初め、やってられるかと拘束をとこうとがむしゃらに腕を動かしたが、一体どんな結び方をしたのかタオルのくせにほどける気配は微塵も感じられなかった。
 ならば先にと考えたのはスザクが遊んでいろと置いて……挿れていったきゅうりを抜くこと。


 台所の壁に寄りかかるような体勢で、縛られた両手をおそるおそるおろせば、背を反らせる必要もなく堅い感触が手に触れた。


 体内は未だに疼いている。
 手を入れてかきむしる想像をするくらいに。

 だが一度頭を冷やされてしまえば、熱に浮かされた淫らな行為など出来ない。
 理性のある状態でそんな破廉恥極まる行為など、出来るはずがない。
 それくらいなら、ずっと悶える方を選ぶ。



「はっ、っ………くそ、あのバカが」


 きゅっと唇を噛み締め、荒い息を殺した。
 肌を汗が伝う。


「ん」

 心をきめてそっとそれを握り、やわやわとほんの少し引き出してみた。

 そんな微かな刺激さえイボのついたきゅうりでは大きく響き、既に心が折れそうになる。
 じれったい動きは痒みを増長させ、もっとと心のどこかで声がする。

 ありえないと理性は叫ぶが、突き動かせと本能が訴える。


 もっと速く。
 もっと激しく。


 はやく屈伏してしまえ。
 そうすれば楽になれる。
 気持ち良くなれる。
 頭が真っ白になるような快楽を知っているだろう?



「じょう、だんじゃ、ない」


 嫌だ。
 そんな淫乱のようなことはしたくない。


 そう思うのに、ずるずると引き抜きもう抜けるかというところで喪失感に襲われ、思わず押し入れてしまった。



「んぅ、は、ぁ」


 やりたくないと思うのに、身体は言うことをきかない。
 いや、それとも本当に望んでいるのはこっちなんだろうか。


 もしかするとスザクもいず一人ということも要因の一つかもしれない。
 一度ぐらい、何をしようとバレないんじゃないだろうか。
 大仕事だけども立ち上がればキッチンばさみもある。
 タオルを切ってしまってシャワーに行って全部流してしまえば。


 そんな言い訳が一人遊びを加速させるた


 抜いて、入れて。
 そのうちそれだけでは満足できなくなって、擦るように揺らし、スザクが突き上げるのを思い出し抉って。


「ん……ふ」


『恥ずかしい子だね、ルルーシュ。きゅうりなんか使って』




 頭のスザクで響くスザクの声に踊らされる。
 妄想だ。
 こんなのは妄想にすぎないというのに、ルルーシュに触れる指だとか、切羽詰まった時の荒い息を思い出すだけで簡単に追い詰められる。


「ん、くっ」


 さんざんなすりつけられた長芋の粘液がきゅうりを動かすたびにぬちゃぬちゃと音をたてる。
 前もすでに限界まで勃ちあがり、腹を先走りで汚していた。


「ぁ、あ」
『ほら、きゅうりでイってみなよ。淫乱』
「ああぁぁあぁー……!」
 


 きゅうりが前立腺を突き上げ、ルルーシュは身体を震わせながら絶頂に達した。
 どくどくと溢れる白濁が台所の床を汚す。

 ぐらりと傾いた身体は自分の精液の上に倒れ、ルルーシュは涙に濡れた瞳をさまよわせた。




「たりなっ」


 異物を締めつけ熱をもったそこはもはや痛いくらいなのに、未だ衰えぬ痒みを訴え続けていた。




























 さて。
 そろそろいいだろうかとスザクは時計を確認した。

 この調節がなかなかに難しいのだ。
 快感で理性も羞恥もとばしてしまって泣きながらスザクだけを求めて縋ってくるルルーシュがみたい。
 ルルーシュは絶対に我慢できない。
 手を縛っているから他にどうしようもなくスザクの置き土産で自らを慰めるだろう。
 そしておそらく満足できまい。
 スザクにならされたルルーシュにきゅうりは細すぎる。


 ああ、その姿はおそらく誰よりも妖艶で、何よりもスザクをかき立てるだろう。
 想像しただけで下半身に血が集まる。

 だがあまり時間をかけすぎるとルルーシュはきっとへばってしまう。体力がないから。
 その前に帰らなければならない。











 近くのコンビニでゴムを買い、家に帰ってスザクは望んだ通りの光景に思わずほくそ笑んだ。

 白濁にまみれ、焦点の定まらない瞳で腰を振るルルーシュはとても淫らだ。
 普段の射るような強い視線はそこにない。



「ルルーシュ」


 そっと囁いてやった。
 その瞬間に細い身体が仰け反った。


「や、ぁ」



 こぷっと性器からこぼれた精液はもう薄く量も少ない。
 一体どれだけイったのだろう。



「すざく?」


 揺れるアメジストは果たしてスザクをとらえているのか。
 呟かれた名前はあまり意味を持っていないように感じた。


 ルルーシュのところまで行くとスザクはルルーシュの顎をくいと持ち上げて口付けた。
 自分の存在を知らしめるように。


「ただいまルルーシュ。いい子でお留守番できた? ってわけでもないみたいだね。こんなに床を汚して。一体何回イっちゃったの? きゅうりなんか嫌、じゃなかったのかな?随分とお楽しみだったようだけど」



 なぶるような言葉をあえて選び耳に注ぎ込んだ。
 その言葉でようやく現実に引き戻されてきたルルーシュは傷ついたように眉をきゅっと寄せた。

 スザクの言葉で一喜一憂する姿はとても愛おしい。
 足の先から頭まで全部、自分のものだと思えるから。


「すざ、ク」
「答えて。ルルーシュ。何回イったの? 自分で後ろ弄って。お尻の穴だけで何回イっちゃったのかな」


 手を縛っているから必然的に前は絶対に触れない。


「あ……………あ、2回」
「ウソ。2回でこんなに床がびしゃびしゃになるはずないでしょ。ウソ吐くなら朝までこのままだよ」
「………………………………ょ………ぃ」
「聞こえないよ」



 こぼれた涙を拭き取ってやりながら優しく囁く。
 言ってる内容が酷いのは百も承知だ。



「4………かい」
「淫乱だねルルーシュ。まあでもいいよほどいてあげる」


 両手を自由にしてやれば、こらえきれないというようにルルーシュがしがみついてきた。
 本当に可愛い。
 自分を縛った男に抱きついているという事実に気がついているのだろうか。



「たすけて」


 小さな懇願にあえて何がととぼけてみせる。



「もう、辛い」



 もう。
 出したくない。
 やりたくない。
 でも収まらない。

 助けて。



 言いたいことは全てわかっていた。
 だがスザクはあえて首を傾げてみせた。



「きゅうりは細すぎて足りなかった?」
「変なのは嫌だ。スザクがいい」




 消え入れそうな声で訴えられたそれに、とうとうたまらなくなってルルーシュ抱きしめた。
 もともととうに我慢の限界を迎えていたのだ。
 あんなルルーシュを目前にしてよくぞ我慢したと自分を誉めてやりたいほどだ。



「ルルーシュ」



 あぐらをかいた膝の上に抱え上げ、そのまま落とした。
 よく解されたそこはあらがうことなくスザクを飲み込んでいった。
 長芋のぬめりがさらにそれを助ける。
 まったく。どれだけ一人でいじっていたのだろう。
 熱をもったそこは貪欲にひくつき喰われてしまいそうだ。



「ルルーシュ。ぬるぬるする」
「ぁ、おっき………ぃ、きつ」



 項に舌を這わせれば汗の味がした。
 抱え上げておとすとそのたびに細い声があがる。


「は、あ……ああ………ぁ」
「ルルーシュばっかり狡いよ。僕も気持ちよく成りたい。動いて、ルルーシュ」


「んな、の、できなっ」



 ぺちぺちと軽く尻を叩いてみるがルルーシュの動きは緩慢で、すぐに泣き言がこぼれた。
 焦らされているみたいだ。
 苦笑して突き上げてやる。


 まあいいだろう。
 普段のルルーシュからは絶対に聞けないような言葉も聞けたことであるし。



「仕方がないな、ルルーシュは。ほら捕まって」



 ルルーシュの腕を首に回して支えてやるが、突き上げる動きに手加減はなく、一緒に可哀相に震える性器を扱いた。


「ひっ、ヤァァ!」

 ルルーシュがバランスを崩すたびに突き上げる角度が変わって、それがたまらないのかひっしにしがみついてくる。
 不安定な格好のまま矯声を上げ続け、自覚なく立てられた爪がスザクの肌を傷つけたが気にはならなかった。



「すざく、すざ……ぁ、も、ねがっ」
「ルルーシュ………かわいい。イっていいよ」

「ふぁ、く………ぁああ!」



 もう出すのすら辛いと泣いていたことを知っていながら、上からルルーシュの身体を落とし前立腺を強くすりあげてやるとルルーシュを大きく身体を仰け反らせた。
 右手で吐き出された精液を受け止め左手でルルーシュの身体を支え、ルルーシュの絶頂によって収縮した孔内でスザクも爆ぜた。



「……………っ」
「ルルーシュ?」


 ずんっと左手にかかる体重が増えた。
 一瞬どうかしたのかと焦ってしまったが、どうやら今ので意識が飛んでしまったらしい。



「ルルーシュー?」



 髪は汗で額に張り付き、頬には涙の跡が残り、体内にスザクを加え込んだまま。


「僕まだ一回しかイってないんだけどなあ」


 くたっと力の抜けたルルーシュに訴えてはみるものの、返事はない――たとえ意識があったとしてもこんなことをいえば気が遠くなったに違いないが。





「どーしよっかなあ。ルルーシュが起きてから洗ったほうが楽しいんだけどなあ。起こすかなあ」







【一言】(反転)
8とか9とか11の意味はブログに書いてあります(5/6か5/16)大変あほらしいのですが、それが全てです。本当は、某様が御希望だからルルーシュ叩き起こしてペットボトルの水流し込んで(冷蔵庫で冷えた奴〜)10番もとい25番をつけたすか、とか思ってたんですけど…………25番の意味がもしかして小かもしれないという事実に気が付き、自粛しました。
一部分だけあからさまにやる気が見えるのはそっとしといてやってください(笑)
途中から明らかに適当になってるのがわかりますが、そっちもスルーで(いやもう本気で枢木さんはイかさず終わってやろうかと)